皆さんは電子カルテというものをご存知だろうか。簡単に言ってしまうと、これまで紙に書かれていたカルテをPCなどの電子機器で記載しようというものだ。電子化によって医療現場の何が変わるのか、そのメリット、デメリットを2011年7月13日から15日の間、東京ビッグサイトにて開催されていたモダンホスピタルショウ2011に出展していた、三洋電機のブースにて同社コマーシャルカンパニー メディコム事業部 医科システム部部長の高橋祐一氏と同事業部販売企画部 担当部長の田代哲也氏に話を聞いた。
日本の医療情報の電子化は、1999年4月22日に各都道府県知事宛に厚生省(当時)の健康政策局長、医薬安全局長、保険局長の連名による「診療録等の電子媒体による保存について」(電子カルテ通知)と呼ばれる通知が出されたことで、診療録を含めた医療情報の電子媒体への保存が明確化され、その後、「電子署名及び認証業務に関する法律」が成立し、2001年4月より施行されたことにより本格化した。
これにより医療現場でのレセプト(診療報酬明細書)を計算するレセプトコンピュータ(レセコン)の導入が進むこととなったが、厚生労働省(厚労省)がレセプトのオンライン請求義務化(療養の給付等に関する請求省令の一部を改正する省令の施行。2006年4月に発令)を打ち出したことで、日本医師会などが完全義務化の撤廃を求める共同声明を発表したり、撤回訴訟が起きるなどの話題となったことを覚えている読者も居られると思う。
紆余曲折を経たが、現在では電子カルテなどとレセコンを連携させたソリューションが電機メーカーなどから各種提供され、大きな病院から導入が進んでいる。しかし、カルテの電子化は、「地域医療の再生の要になる」と同社では見ており、むしろ大病院ではなく、医師不足などで困っている地域の診療所などで本来であれば活用されるべきだとの考えを示す。
ネットワークによりデータセンターにある患者のカルテを地域の診療所とその地域の中心となる大きな病院の医師がその患者同意の前提のもと、両方で共有することで、より高い質の医療を提供することが可能になるためだ。特に、長年、医療機関に通う患者のカルテ情報は膨大で、そのすべてを別の医師に連絡することは1人2人であればいざしらず、何十人、何百人規模となると、受け取る病院側も処理が追いつかなくなる。また、もし病院のほか、データセンターに患者のデータがバックアップされる形であれば、患者がどのような治療や薬を受けてきたかが、仮に病院が機能を喪失しても、データセンター側のデータを見ることができれば、別の病院で引き続いて従来同様の対応を受けることが可能となる。2011年3月11日の東日本大震災では、まさにこの問題が医療現場で生じた。同社でも、こうした問題が起こる危険性は承知していたが、アピールが足りなかったと悔しさを滲ませる。
同社は電子カルテシステムとして「Medicom」というブランドで、診療所向け、病院向け、保険薬局向けなどのさまざまなタイプを提供しているが、「カルテはさまざまな医師が使う」ということを前提に、診療科や医師の好みに応じて、ユーザインタフェースや使用する機能のオン/オフなどをカスタマイズできるモジュール方式を採用している。また、レセコンとの連携や受付での新患登録などとも連携しており、それらのデータを医師側でも確認することができる仕組みを取り入れている。
また、タッチパネルへの対応や、メジャーな病気に対する一般的な治療薬のリストを病気に応じて自動的にリストアップしたり、処置部位も含め、病名、処方箋などを1画面に表示できるほか、会計においても、片方に診断書、もう片方にレセプトを表示といった、紙ベースでの使用を意識した使い方も可能となっており、メディコムとしては実際に80歳の医師も使っているという。