シャープは7月8日、イタリア・カターニアにおいて、イタリア最大の太陽電池工場「3Sun」の開所式を行った。同工場は、シャープ、エネルグリーンパワーおよびSTマイクロエレクトロニクスの3社が、薄膜多層セル・モジュールの生産を行う生産拠点として、共同出資して設立したもの。

3社は共同事業の第1次展開として、年間160MWの太陽電池を生産する3Sun工場を稼働。今後成長が期待される欧州、中東、アフリカ市場へ太陽電池を供給することになる。今後数年間で年間480MWにまで生産能力を増強する計画だという。

3Sun工場

稼働当初は280人体制でスタート。今回の新工場稼働にあわせて、エネルグリーンパワーは、再生可能エネルギーを使用した発電所の開発と運営を世界レベルで展開するほか、傘下のEnel.si社が持つ570件を超えるフランチャイズネットワークを通じてイタリア全土で太陽電池パネルを販売する。

シャープは、すでに日本のグリーンフロンント堺で生産を進めている独自の薄膜多層太陽電池技術を提供することに加え、欧州販社を通じ太陽電池パネルを販売する。また、STは、生産管理技術と最先端エレクトロニクス分野や省エネ電力管理システムに通じたスタッフを提供することになる。

さらに、エネルグリーンパワーとシャープは、合弁会社であるESSE(Enel Green Power & Sharp Solar Energy)を設立。ESSEは新工場で生産される太陽電池を使用することで、2016年末までに500MW以上の規模となる発電事業を、欧州、中東、アフリカで展開する。

シャープでは、太陽電池事業を海外展開における成長事業のひとつと位置づけており、今回の工場建設は、太陽電池事業の成長戦略としても重要な意味を持つ。

なお、開所式には、シャープの町田勝彦会長、濱野稔重副社長、エネルのパオロ・アンドレア・コロンボ会長およびカルロ・コンティCEO、エネルグリーンパワーのフランチェスコ・スタラーチェCEO、STのカルロ・ボゾッティCEO兼社長、ブルーノ・スティーブ副会長、3Sunのアンドレア・クオモ会長およびマウロ・クリアーレCEOといった首脳陣が参加。さらに、イタリア経済産業振興省・ステファノ・サリア次官、シチリア州・ラッファエーレ・ロンバルド知事、カターニア県・ジュゼッペ・カスティリオーネ県知事、カターニアのラッファエーレ・スタンカネッリ市長が参加した。

開所式のテープカットの様子

開所式の会場の様子

開所式でシャープの町田勝彦会長は、「太陽電池は当社を代表する製品。創業者の早川徳次は、ラジオやテレビなどの電気製品を製造する一方で、これらの製品を動かす電気をつくることを夢見ていた。1959年から太陽光発電の実用化に向けて研究開発を開始。灯台用、人工衛星用といった過酷な条件化での実用化や、無電化地域、公共施設への設置などで信頼性と技術を蓄積してきた。2010年末までの累計生産量は、4.3GWと世界トップであり、今後、欧州や地中海地域を最も重要な市場と位置づけている。この事業拡大を図るための取り組みの象徴が、3Sunプロジェクトであり、カターニアはソーラー市場の玄関に位置する。世界最高水準の技術を通して、3sunの事業拡大とカターニアでの雇用の創出に貢献したい」とした。

シャープ 会長 町田勝彦氏

さらに、「エネルグリーンパワーと協力して、ソーラー発電事業を本格的に展開し、イタリアを中心にEMEA地域への事業を展開していく。これはバリューチェーンの川上から川下までを同時に押さえた画期的なビジネスモデルであり、同時に、イタリア国や当該国での雇用創出や電力創出という面で貢献できると信じている」と語った。