東芝は、自動車の機能安全規格「ISO26262」に対応した電子制御ユニット(ECU)向け車載制御用マイコンとして、電動パワーステアリング制御用「TMPM350FDTFG」とハイブリッド自動車(HEV)/電気自動車(EV)の駆動用モーター制御用「TMPM354F10TFG」の2製品を発表した。2製品ともに2011年9月からサンプル出荷を開始し、2013年4月から量産を開始する予定。サンプル価格は350FDTFGが1000円、354F10TFGが1600円となっている。
2011年中には発行される見込みである車載ECUを対象とした機能安全規格「ISO26262」により、電子制御ユニットの中核部品であるマイコンに対して、一部の機能が故障しても安全に制御する「フェールセーフ」機能を搭載することが必要となる。
今回の機能安全マイコンは、CPUコアに専用の監視回路を付加した「シングルコア型密結合方式」を採用している。同方式は、従来の「デュアルロックステップ方式」と比較して、専用の監視回路の導入により、内部状態の故障が即時に検出でき、故障発生箇所を絞り込むことが可能となるため、最低限の機能を確保しながら動作を継続する「フェールオペレーショナル」が可能なECUを構築することが可能となる。
350FDTFGは、独自のモーター制御回路、回転角センサ用の励磁信号出力回路、A/Dコンバータなどを内蔵したもので、モーターからの外部信号入力精度を高め、出力信号の分解能を細かく設定することでより精密な制御が可能となる。
一方、主に駆動用モーターの制御に用いる354F10TFGは、モーターの回転角センサ信号をデジタルデータへ変換する「センサインタフェース回路」をデジタル回路化することで、面積を削減している。また、従来は励磁信号を使用する回転角センサのみに対応していたものを、センサ入力信号に適切な補正を行うことで、励磁信号を使わない回転角センサにも対応する機能を搭載したことで、汎用性を向上させた。さらに、従来ソフトウェアで行っていたモーターのベクトル制御関連の基本的な処理を、ハードウェアで実行することで、CPUへの負荷を50%以上削減することに成功している。
なお、同社は今後も機能安全規格に対応した製品を拡充することで、マイコン市場におけるシェア拡大を図り、2015年度で、機能安全規格に対応したマイコンの売上高100億円を目指すとしている。