国立天文台は、7月2日(ハワイ時間)に障害が発生した「すばる望遠鏡」について、7月4日(同)以降に判明した障害の範囲および復旧作業の進捗、今後の見通しなどを発表した。
7月2日の障害発生以降、冷却液漏れの影響の範囲を調査したところ、望遠鏡主鏡、主鏡の裏面支持機構部の一部、主鏡セル、第3鏡、主焦点周辺光学系システムおよび主焦点カメラ(Suprime-Cam)、カセグレン焦点周辺光学系システムおよび微光天体分光撮像装置(FOCAS)、観測床、床下に冷却液の付着が確認された。中でも、周辺光学系システムおよびSuprime-CamとFOCASについては、装置内部への浸水が確認されたという。
一方、観測施設(ドーム)外部および施設の立地する地面への冷却液の漏れはなく、環境への影響はないことも確認された。
漏れた冷却液の量は、循環させている液の減少量から約700lと推定されるが、この障害の原因については、国立天文台外の委員を含む事故調査委員会を設置し、調査を進めている状況としている。
ハワイ観測所では、7月21日までのすばる望遠鏡の共同利用観測の停止を決定し、望遠鏡の復旧作業を開始。7月4日までに行った清掃作業に続き、7月6日には第3鏡を水で洗浄し、その効果を確認し、7月7日から主鏡の洗浄を行ったところ、冷却液の付着を取り除くことに成功した。また、これによる鏡表面のアルミニウムコーティングの傷みは目視では確認されておらず、今後、反射率の詳細な測定を進める予定としている。また、主焦点、カセグレン焦点については、影響をうけた装置をとりはずし、内部の検査を進めている状況とする。
洗浄作業実施後の望遠鏡主鏡(ハワイ時間7月11日)。前回の発表の写真にみられた冷却液は除去され、表面の反射も目視上、通常どおりとなっている。なお、主鏡は平面でないため、写っている像はゆがんで見えるのが正常だという((C)国立天文台) |
今後は、望遠鏡主鏡の洗浄の効果を詳細に確認するとともに、望遠鏡駆動試験を実施する予定。望遠鏡を傾けると望遠鏡内に残っている冷却液が再び主鏡に付着する可能性があるため、必要に応じて再び洗浄を行う計画で、これらの作業が順調に進み、安全性に問題がないことが確認されれば、第3鏡を用いたナスミス焦点での試験観測を実施する予定とするが、主焦点およびカセグレン焦点については、周辺光学系システムや装置の検査・修復により長時間を要する見込みで、これらの調査をさらに進め、今後の共同利用観測のスケジュールの見直しを行っていくとしている。