Xilinxの日本法人であるザイリンクスは7月13日、同社の次世代FPGAである「7シリーズ」のハイエンド製品となる「Virtex-7」のESLABサンプル品の出荷を2011年7月より開始したことを明らかにした。

これにより7シリーズとしては、「Kintex-7」が2011年3月より出荷を開始、そして「Virtex-7」が同7月より出荷を開始しており、残る「Artix-7」の出荷を残すのみとなった。Artix-7は2012年第1四半期のESLABサンプル品の出荷を予定している。

1アーキテクチャを3つの製品ラインアップに適用することで、それぞれのマーケットに対応する価格、性能に対応する

Virtex-7は前世代のVirtex-6比で消費電力を半分に落としたことで、同等の電力消費であれば性能を2倍に向上させることが可能となっている。特にVirtexシリーズがターゲットとしてきた通信基地局向け装置やHPCなどの分野では、コンシューマ機器に比べ、機器数そのものの数が少ないためそれほど多くなく、そうした分野にASICを適用しようとすれば、一説には28nmプロセスを採用した2000万ゲートのASICをデザインしようとした場合4300万ドルの費用と29カ月の期間が必要と言われており、非現実的となっている。また、ASSPでは、システムの評価期間などを含めると、次世代規格などが登場してしまい、一世代遅れを取ってしまう。そして、競合FPGAベンダも28nmプロセスを採用しているが、「TSMCの28nm HPL(low power with HKMG)プロセスはもともとXilinxとTSMCが共同で開発し、FPGAに最適化を図ったプロセスであり、競合はGPUに最適化を図った28HPプロセスと携帯電話に最適化を図った28LPプロセスをFPGAに適用している。FPGAとして電力設計と性能のバランスを考えれば、我々に分がある」と強気の姿勢を見せる。

Virtex-7にはV/VX/HTの3つのファミリが用意され、28Gbps GTZトランシーバを搭載したHTファミリでは最大96シリアルチャネルによる最大2.7Tbpsのシリアル帯域幅を実現する。また、複数のFPGAスライスを搭載するスタックド・シリコン・インターコネクト(SSI)テクノロジをVおよびVXファミリの合計5製品に採用し、最大で200万ロジックセル容量を実現する。さらに、同社第6世代目となる最高700MHz、3960のシストリックDSPスライスを持つDSPにより5.1テラMACCを実現することが可能となっている。る。今回、出荷を開始したのはVXファミリの「XC7VX485T」で、同社ではロジックセル容量的に、もっとも広範な用途に使用してもらえるVirtex-7製品と説明している。

VX485Tは、12.5Gbpsのラインレートで動作するGTXトランシーバを搭載し、56個のGTXチャネルをサポートするデバイス。ロジックセル数は48万5760で、例えば陽電子射出断層撮影(PET)スキャナに採用した場合、従来の同等価格のVirtex-6では48チャネルのDUCのサポートのところ、96チャネルのDUCのサポートが可能となり、各チャネルそれぞれでキャリア周波数を相殺し、パワースペクトル密度を見ることで、12Hz~45Hz間で正常に機能していることがすでに検証済みだという。

また、消費電力については、例えば、同等価格帯のVirtex-6 LX240T、Kintex-7 K325Tと比較した場合、LX240Tのスタティック電力が約4W、K325Tが1W弱、VX485Tが約2Wだが、Power Comsuming Module(PCM)のすべての機能(PicoBalse、LFSR、FF、Accumulator)をONにした場合、LX240Tが512個で約7W、K325Tが同512個で3W強、そしてVX485Tが944個で6W強と、消費電力と性能のバランスが取られている。ちなみに、この場合のそれぞれのFPGAの使用率はLX240Tで90%、K325Tで70%、VX845Tで80%程度と同社では説明している。

なお、VX485Tの初期エンジニアサンプルは2011年8月より出荷を開始する予定としている。

Virtex-7の各種性能。ただし、これらの値を1個のデバイスで実現しているというわけではなく、それぞれ別々の最適化されたデバイスの値

Virtex-7とKintex-7の最初の製品の出荷状況。今後、順次、幅広いカスタマに向けた製品の出荷が進められていく。なお、ESLABと初期エンジニアリングサンプルの違いは、評価の範囲がESLABの方が狭いという説明があった

Virtex-7のVおよびVXシリーズのラインアップ。赤枠で囲っているのがSSIテクノロジの適用製品の型番