最上位製品となる「Sysmac NJ501-1500」の外観

オムロンは7月11日、今年度よりスタートした2020年までの長期構想「Value Generation(VG)」の中核の1つとなるマシンオートメーションコントローラ「Sysmac NJシリーズ」を発表した。

VG 2020の1つとして、同社のインダストリアルオートメーションビジネス(IAB)カンパニーでは、「世界中のオートメーションパートナーとして進化を続ける」ことをカスタマに対して約束している。その方策として、「制御No1」「品揃えNo1」「未来No1」の3つのNo1をうたっている。この中で、制御No1は、マシンコントローラでNo1と置き換えられると同社では説明しており、今回の発表したNJシリーズは、それを実現するためのコア製品と位置付けられている。

技術としては、これまでASICを起こして、独自に開発した機能、性能の作りこみをやめ、プロセッサとしてIntel Atomを搭載。今回採用されるAtomプロセッサの型番は非公開だが、1コアタイプのもので動作周波数は1.6GHzとしている。また、専用ソフトウェア「Sysmac Studio」はMicrosoftのWindows Presentation Foundation(WPF)を採用したWindowsベースのものとなっている。

同シリーズが、これまでの同社製品とまったく異なる方向性を示した背景として、同社では「エンジニアは本来、新しい技術をどんどん学び、推進していくべき存在。しかし、日本の慣行がそれを許さず、結局、新技術を覚えたり、若い人にノウハウを教えるよりも、自分が先にやってしまった方が早い、ということになる。それでは海外と競争した場合、勝つことは難しい」と、既存のハードウェアアーキテクチャを前提とした開発環境に限界が来ていると判断したほか、教育現場で教えているC言語などと、実際のPLCで使われるラダーロジックでは乖離が大きすぎ、現場の若いエンジニアでも理解しやすく、触れやすいソリューションでなければ将来性はないと判断したことが挙げられる。

また、「さまざまなエンジニアがさまざまなシーンでストレスを感じており、そのストレスをいかに感じられるシステムを作り、これまでの教育で培ったノウハウなどを簡単に使えるソフトウェア体系を構築することで、顧客である機械メーカーの教育負担が軽減され、有能な人材を適材適所に配置することが可能となり、それを競争力に結びつけることができるようになる」とも説明しており、簡単なプログラミングを目指し、国際標準規格IEC61131-3を本格的にサポートしたプログラミング環境を提供するとしている。

日本製造業の課題

製造業の人材に求められる技術と教育現場で教える技術に乖離が生じている

オムロンとしては、そうした差を埋めるための新たな取り組みとしてオープン化へと舵を切ったとする

Sysmacは元々同社が過去数十年にわたしPLC製品に適用してきた名称で、今回、そのPLCがオートメーション分野をリードする製品というコンセプトを継承しつつ、機械メーカーに入力から出力まで、つまりセンサからサーボモータまですべて応えるブランドとして、改めて構築された。

NJシリーズはAtomを搭載し、Windowsベースのソフトウェアということで、オープンスタンダードなシステムとして提供される。そのため、インタフェースもUSB1.1のほか、SD/SDHCにも対応が図られている。また、工業用として、EtherNet/IPとEtherCATに対応しており、これにより、「ワンマシンコントロールとして、管理と制御を1つの機器で実現することができるようになり、簡単な扱いを可能とした」とし、PLCのエンジンとモーションエンジンを完全に同期させたことで、PLCのタイミングコントロールをシンプル化し、その結果、倍精度浮動小数点演算では従来のマイコン比で230倍の性能向上、同社の現行の最高クラスの機種「C12H」に比べても4倍の性能向上を実現したという。

USBやSD、EtherNet/IP、EtherCATなどの機能への対応も図られた

Atomプロセッサの採用や、モーション機能とPLC機能の融合などにより、命令実行速度は従来比で8~230倍に高速化したという

また、そうした簡単な取り扱いのためにはデータが重要ということで、ハードウェアとソフトウェアを完全に分離、変数としてI/O、サーボ、軸のすべてを扱うことができるようになったため、軸の数の変更やビット数の変更など、これまでのラダーロジックでは変更に手間がかかっていた問題が無くなるほか、シミュレータも強化、ソフトウェア画面上で、オシロスコープのように波形を確認することが可能となるため、オシロスコープを使用する必要がなくなるとしている。

なお、同社では今後、日欧中の3拠点で「オートメーションセンタ」を今年度中に開設する計画としており、機械メーカーとの新しい提案や取り組みなどを行っていくコラボレーションの場として活用していく方針としている。