面倒な入国手続きにうんざりしながらも、2011年7月6日の午後3時(現地時間)過ぎ、なんとかケネディ宇宙センター(KSC)まで到着した。現地の天候は晴れ。日本も暑かったが、フロリダは南国。もっと暑い。
オーランド空港に貼ってあったポスター。シャトルの時代が終わって、Falcon/Dragonの時代が始まると… |
KSCのバッジ交付オフィスの近くには目印のレッドストーンロケットが。しかし今日は一足遅くて手続きできず |
さて打ち上げの最新状況であるが、ちょっと嫌なニュースが聞こえている。今回、機体の準備作業に関しては順調に進んでいるものの、打ち上げ当日(7月8日、現地時間)の天候に問題が出ており、天気予報によれば雷雨の可能性があるという。機体への落雷は最も避けなければならないことの1つであり、回復に向かわなければ打ち上げは確実に延期だろう。今のところ、打ち上げられる確率は30%と、かなり低くなっている。
さてここで、スペースシャトルについて、改めて振り返ってみたい。
スペースシャトルはご存じのように、宇宙への往還が可能な有翼型の宇宙船である。初飛行は1981年の「コロンビア」(OV-102)。以降、「チャレンジャー」(OV-099)、「ディスカバリー」(OV-103)、「アトランティス」(OV-104)、「エンデバー」(OV-105)の計5機のオービターが建造されたが、事故により2機が失われ、現存するのは3機だ。ディスカバリーとエンデバーはすでに引退しており、アトランティスの打ち上げで全てが終了する。
オービタ | 就航 | 回数 | 通算飛行距離 | 人数 | 備考 |
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コロンビア | 1981年 | 28回 | 121696993マイル | 160人 | 2003年の空中分解で喪失 |
チャレンジャー | 1983年 | 10回 | 23661290マイル | 60人 | 1986年の爆発事故で喪失 |
ディスカバリー | 1984年 | 39回 | 148221675マイル | 252人 | STS-133で引退済み |
アトランティス | 1985年 | 32回 | 120650907マイル | 203人 | STS-135で引退予定 |
エンデバー | 1992年 | 25回 | 122883151マイル | 173人 | STS-134で引退済み |
各オービターのフライトデータ(STS-134まで) |
STS-135は、スペースシャトルとして135回目のフライトであり、そして最後のフライトである。アトランティスとしては33回目のフライトだ。もともとは、スペースシャトルは前回のSTS-134で終了する予定だったのだが、クルーの救出用に準備されていたアトランティスを使わないのはもったいないということで、追加ミッションとして再設定された。そのため、アトランティスのための救出シャトルはなく、クルーは4名のみとなっている。
スペースシャトルは構想の当初から、機体の再使用が可能なことによる低コストをコンセプトにしていたが、あまりに複雑なシステムのために実際にはコストはほとんど下がらず、2010年度では1回の打ち上げあたり平均で約7億7,500万ドルもの経費がかかっていた。また5機中2機を失うなど安全性にも問題があり、こういった問題がスペースシャトルの引退を決めたと言っていいだろう。
とはいえ、あれほどまでに複雑で、あれほどまでに巨大なシステムを作ってしまうのは、いかにもアメリカ的。やっぱりこれはすごいことだと素直に思う。筆者は今回、初めてのシャトル取材がラストフライトになってしまったわけだが、打ち上げを見て感動するのか感慨に浸るのか、いまだに判断がつかないでいる。
スペースシャトルは国際宇宙ステーション(ISS)の建設において、大きな役割を果たした。最後のミッションもやはりISS関連となっており、多目的補給モジュール「ラファエロ」等を運ぶのが目的だ。この組み立てミッションが終われば、あとは2012年5月にプロトンで打ち上げる多目的実験モジュール(MLM)と欧州ロボットアームを残すのみ。1998年から建設が始まったISSがついに完成する。