九州大学大学院薬学研究院・革新的バイオ医薬創成学の米満吉和教授らによる研究グループは、高いがん細胞殺傷能力を有する高純度のナチュラルキラー細胞(NK細胞)に関する新しい選択的増幅培養技術を開発し、同技術に関する特許について、東京大学発細胞治療ベンチャー企業「テラ」と共同出願したことを発表した。

NK細胞は、白血球成分に含まれ、高いがん細胞殺傷能力(細胞傷害活性)を持つ細胞であり、ウイルス感染細胞やがん化した細胞を攻撃し、病気を未然に防いでいる。そのため、感染症やがんの免疫細胞療法に適した免疫細胞であると期待されてきたが、これまでの研究では、効率の良い増幅と活性化が難しかった。

今回、研究グループが開発した技術を用いると、高い細胞傷害活性を有するNK細胞を、簡便かつ90%を超える純度で、数百倍に増幅することが可能となる。具体的には、同技術で培養されたNK細胞のほぼ100%がリンパ球系細胞の活性化マーカーであるCD69を発現(培養前:5~10%)し、かつ細胞殺傷分子であるパーフォリンおよびグランザイムの細胞内含有量が、培養前と比較して約4~10倍へ増加する。さらに、NK細胞活性の指標として標準的に用いられるK562細胞に対し、細胞比が1:1かつ2時間で、ほぼ100%の細胞殺傷効果を再現性良く得ることが可能になったという。

従来手法と今回開発した手法との違い

この結果、同技術を用いてNK細胞の細胞傷害活性を高めることで、少ない投与回数かつ少ない細胞数で高い感染寄生体除去効果、抗腫瘍効果が得られると考えられ、幅広い疾患に対するNK細胞を用いた効果的な免疫細胞治療の開発へつながることが期待できるなどの医療現場ならびに産業上の有益性が見込めることから、今回の特許申請がなされたという。

なお、研究グループでは、すでにマウスがん治療モデルにおける高い治療効果も確認していることから、今後は臨床試験を前提としたスケールアップ培養法を確立し、早期の医療現場への還元を目指すとしている。