2~3年後にはネットへのアクセス端末はモバイルがPCを上回る
6月に英ロンドンで開催された「Open Mobile Summit 2011」において、米Adobe SystemsのCTO、Kevin Lynch氏が基調講演に登壇した。Lynch氏はモバイルアプリ開発のニーズに対するAdobeの方向性を示すとともに、位置情報を利用してアプリが自動的にプッシュされるAdobeが描く未来のモバイルサービスのデモを披露した。
Lynch氏は前半、モバイルの重要性とAdobeの戦略について話をした。
スマートフォンブームによりモバイルインターネットが世界的に開花した。「2~3年後に、ネットにアクセスする端末として、モバイルはPCを上回る」とLynch氏。モバイルアプリ開発はデスクトップアプリよりも重要性が高まっており、「開発者はモバイル第一で開発している。明確なシフトが起こっている」と述べる。
アプリケーションではここ1年ほど前から、HTML5とFlashの関係が大きな話題になっている。引き金となったのは、米AppleのSteve Jobs氏が「iPhone」「iPad」でFlashをサポートせず、ブラウザ内で動画の埋め込みが可能になるHTML5によりFlashは不要になるという見解を示した件がある。以来、Flash対HTML5という構図ができているが、Lynch氏は「FlashとHTML5は共存する」と言い切る。Adobeも、自社技術のFlashはもちろん、HTMLにも取り組んでいるとLynch氏は述べ、例として、CSS3で標準化を目指すWebパブリッシュ技術「CSS Regions」を紹介した。レイアウトを柔軟に編成できるもので、デジタルマガジン上の写真を動かすと周囲のテキストが自動的に回り込む様子を「Samsung Galaxy Tab」上でデモしてみせた。
Flashの取り組みとしては、「BlackBerry PlayBook」上でハードウェアアクセラレーションを利用した480pのHDビデオを披露した。また、アプリ実行環境「AIR」を年内にモバイル対応することにも触れた。「アプリ開発ブームの一方で、たくさんのOSがあり、これらに対応させることは開発者にとって大きな問題になっている」とLynch氏は述べ、AIRにより問題を緩和できるという意見を示した。「さまざまなOSで動くAIRは、モバイルアプリケーションのクリエイティビティやエクスペリエンスを重視する人にとって革命的なものになる」(Lynch氏)。
スピーチ中、AIRで開発したチェスゲームを披露し、PlayBook(OSは「QNX」ベース)、Galaxy Tab(「Android」)で動かして見せた。「修正せずに動く」とLynch氏、iOSでも動くほか、TV、PCなどさまざまな端末にも対応する。