国立天文台は7月5日、2011年7月2日午前5時30分(ハワイ現地時間。日本時間は同3日午前0時30分)の観測終了後に、オペレータが観測装置や望遠鏡を格納する作業をしていたところ、主焦点周辺光学系システムからの誤動作信号を検出したことを発表した。
主焦点カメラや主焦点周辺光学系システムを含む「主焦点部」は、すばる望遠鏡の最上部(筒頂部)の中央にあり、望遠鏡技術部門の3人の職員が調査したところ、望遠鏡上部の主焦点付近から冷却液(自動車の不凍液としても使用されている エチレン・グリコールと、水との混合液体)が漏れ出していることを発見し、その冷却液の供給を止めた。
障害の発生した主焦点ユニットを上から見下ろした写真。中央に見える六角形のものは主焦点カメラ(SuprimeCam)の上部で、故障はその周辺にあるケーブル巻き取り機構と観測装置回転機構の同期回転に不具合があり、両者をつなぐケーブルやホースなどに異常な力がかかり、コネクタ付近で内部の切断、変形損傷などが生じたと推定されている(出所:国立天文台Webサイト) |
国立天文台では、この供給停止までの間に相当量の冷却液が漏れ出し、その範囲は望遠鏡上部から主鏡、主鏡の裏面支持機構部の一部、第3鏡、カセグレン焦点の観測装置「FOCAS」および周辺光学装置、そして観測床を通じてその床下など広範囲に及んでいるとしている。
主鏡表面の冷却液の付着状況。表面にオレンジ色に見える液体が冷却液(エチレングリコールと水の混合液)。これは主鏡のガラス鏡材を損なうことはなく、水洗いなどで対処可能だという。なお、手前上方に見えるノズル状のものは、主鏡の埃を吹き払うCO2クリーニング装置の一部(出所:国立天文台Webサイト) |
望遠鏡技術部門担当者による当日の作業により、冷却液をかなり清掃・回収したものの、一部の光学系、 制御用電子回路板、観測装置内部などアクセスが容易ではない場所については、まだ清掃・回収作業に至っていないという。
これらの機器類への液体付着による様々な機能への影響や、修復作業が必要な部分の作業などについては、 いずれもまだ初期評価・作業の段階にあり、当面は清掃・修復作業のため、一時的に夜間観測を中止せざるを得ないとの決断となっており、観測が間近に迫っていた研究者などには、その旨の緊急連絡を行っているとしている。
なお、国立天文台ではこれまでの作業に基づき、原因調査および復旧計画のための検討を進めているとするほか、今回のトラブルにおける観測所スタッフおよび共同利用観測者の安全・健康管理上の問題はなかったとしている。