説明を行った三洋電機 執行役員 コマーシャルカンパニー バイオメディカ事業本部長の加藤隆一氏

三洋電機は6月29日、1966年の薬用保冷庫の発売以来、国内で培った独自技術と細胞治療分野の実績をもとに、機器とサービスのトータルソリューションで細胞治療事業を海外へ展開していくことを発表した。

同社のバイオメディカ事業の規模は2010年度で223億円。国内ではセルプロセッシングアイソレータなどの細胞治療分野機器でシェア60%で1位を獲得しているほか、薬用保冷庫やバイオメディカルフリーザ、超低温フリーザ、CO2インキュベータ(細胞培養促進機)などでシェア1位を獲得しており、海外展開としては、米国シカゴ、上海、シンガポール、ドバイ、蘭エッテンルーワに販売拠点を、米国、中国、台湾にそれぞれ生産拠点を有している(国内は販売9拠点、生産2拠点)。

三洋電機 バイオメディカ事業の国内および海外拠点

同社は2015年度に調剤機器事業で90億円、細胞治療事業で150億円、研究支援機器で260億円の合計500億円の売り上げを計画しており、中でも細胞治療事業は2010年度比で8倍の売り上げ拡大を計画いているが、その中軸となるのが海外展開となると、同社執行役員 コマーシャルカンパニー バイオメディカ事業本部長の加藤隆一氏は語る。

同事業を2013年度には500億円の売上高まで成長させることを目指す

同社の予測では2015年の細胞治療のグローバルの市場規模は2500億円。年平均成長率は130%で、その半数程度が北米地域で占められるものとしており、「150億円の売り上げの内、70億円を日本、50億円を北米、30億円を欧州と見ているが、同時に研究支援機器を海外に展開し、そこのシェアも高めていかないと、単に細胞治療の機器だけを持っていっても受け入れてもらえない」との見方をしており、日本で展開している細胞治療施設や機器に施設管理の装置やソフトウェアサーボスなどを組み合わせたトータルソリューションのビジネスモデルを海外へ展開していく方針を示す。

2010年度の事業規模/シェアと2015年度における各地域の事業規模/シェアの目標値

「セルプロセッシング分野では2000年にセンターという大規模なシステムを投入したが、それでは大規模な施設にしか入れられなかった。2007年にアイソレータとして小型化をはかり、さらに2010年には高機能化と機能拡張を図ったワークステーション(CPWS)を開発、除染時間の短縮などを実現した」(同)とのことで、こうした機器はiPS細胞の研究を進める国内最先端の研究所の1つである京都大学iPS細胞研究所にも導入されている。

同社が提供するセルプロセッシングアイソレータは、省フットプリント化、取り扱いの容易化、処理時間の短縮などの改良が施されてきた

「こうした成果を海外に展開したいと思っているが、単に装置だけを届けるのではなく、GMP基準の運用ノウハウなどを含め、各機器の取り扱いやソリューションの使い方を熟知した医療知識を有する海外専任者を用意するなどのソフト側のサービス拡充も進めていく」とのことで、すでに2011年6月8日に米国アラバマ大学バーミングハム校へCPWSを納入を果たしており、そうした取り組みをベースに海外向け保存機器の50%を海外(現地)で生産することを2013年度までに実現することを目指すとする。

細胞治療事業としてはハードウェアの提供を行うために、ソフトウェアやサービスまで含めたトータルソリューションとして提供を進めていくことで、売り上げの拡大とシェア拡大を狙う

海外では保冷庫を中心に生産を行い、研究開発の支援を進めていく方針で、すでに中国では一部生産品を日本に逆輸入する形での生産も行っているが、先端分野である調剤や細胞治療などについては、細かな調整ノウハウなどが難しいため、逆に日本での生産能力を増強していくとしており、そのため2011年秋には群馬県の生産拠点を増床する計画を立てている。同増床の投資規模は非公開だが、現在の工場の広さが1万m2で、これに4000m2を追加する予定。これにより新たに増床したラインで培養装置や調剤、細胞関連機器を製造し、ラインが空く既存部分では超低温フリーザなどの付加価値の高い機器の製造を行っていく計画とする。

一方の海外生産では、中国、台湾に加え、2010年9月に米国サンディエゴに北米地域向け生産拠点「SANYO E&E(SEE)」を開設。既存製品の外形寸法を変えずに収納ラック数を拡大したモデルを生産するなど、現地ニーズに合わせつつ、かつ省エネを実現した製品の生産を行っていき、2013年度で31億円の売り上げを目指すとする。

研究支援機器の海外生産能力を高めていくことで、より付加価値の高い機器の日本での生産能力の向上と、現地でのカスタマへの提案能力強化の実現を目指す

なお、同社は2011年度の新製品としてすでに出荷を開始しているVIP超低温フリーザ「MDF-U700VX」のほかに、日本国内向けバイオハザード対策用キャビネット「MHE-S1300A2」および、ワールドワイド向けに北米のニーズを取り入れた容量700lのフリーザ付き薬用保冷庫「MPR-715F」の販売をそれぞれ2011年12月に予定している。

6月29日から7月1日にかけて行われている「第10回 国際バイオEXPO」の同社ブースにて展示されている同社の各種商品。この内、「MHE-S1300A2」と「MPR-715F」は、2011年12月ころからの供給が予定されている最新機器となる