竹中工務店は、東芝ナノアナリシスと共同でカーボンナノチューブ(CNT)飛散量を算出できるシステムを開発したことを発表した。同システムでは特殊な処理を施すことで、従来の作業環境測定方法では難しかった、空気中に飛散するCNTを炭素量として定量的に評価することが可能となるほか、通常2~3日かかっていた分析作業を最短半日で実施することができるようになるという。

通常、CNTについて暴露量の評価をする場合には、捕集したフィルタの重さと本来のフィルタの重さの差により算出する方法と、電子顕微鏡による形状観察を行うという2つの方法がある。前者の場合には付着した重量をすぐに算出することはできるが、同時に捕集された他の成分の重量も含まれていることから、CNT飛散量を高めの値として評価してしまう可能性がある。一方の後者の場合は専門機関に検体を送付して精密検査を行うため、結果が出るまでに約2~3日かかるという課題があった。

同システムによる定量方法は、まずCNTを扱っている「部屋全体」・「作業エリア周辺」・「人の呼吸域」など範囲を確定して捕集用のフィルタを設置し、約10分間設置して、飛散するCNTを捕集する。

次に捕集後すぐに検体を持ち帰り、特殊な処理を施し、測定に影響する他の有機物等の妨害成分を取り除いてCNTだけを分離。

そして分離したCNTを炭素量として定量し、その結果に基づき最適な飛散防止、暴露対策を提案するというもの。

2009年3月、厚生労働省や経済産業省からナノマテリアルに関する暴露防止・安全対策についてのガイドラインが出され、ナノマテリアルを製造・扱う作業環境では作業者への暴露防止や、作業域外への排出対策が求められるようになった。また、産業技術総合研究所からカーボンナノチューブ・フラーレン・二酸化チタンに関する「ナノ材料リスク評価書(中間報告版)」が2009年から公開されており、評価書の中では、人体への有害性評価結果に基づいて、作業環境における「許容暴露濃度(mg/m3)」の推定値が提案されている。今回開発したシステムにより評価した結果を、CNTの「許容暴露濃度(mg/m3)」と比較することで、暴露対策工事の必要性を判断することができるようになるという。