ユビキタスは2011年6月17日に都内で記者発表会を開催し、同社代表取締役社長の三原寛司氏が同社の第二創業新ビジョン、及びSassorとの業務提携を発表した(Photo01)。
Photo01:説明を行った同社代表取締役社長の三原寛司氏。4月のレポートにあるように、同氏は2011年3月に代表取締役社長に就任し、これが氏としては初めての経営方針の説明会ということになる |
まず同氏はこの10年を振り返りつつ(Photo02)、「サーバ側とアプライアンス側の両方の技術を提供できる会社になることを目指して、ユビキタスという社名としたのにも関わらず、実際にはアプライアンス側のビジネスをしてきた」とまとめた(Photo03)。
Photo02:一番大きいのが、やはりニンテンドーDSに採用されたネットワークフレームワークのロイヤリティで、これが同社の売り上げの少なからぬ部分を占めていると言う |
Photo03:かならずしもビジョンを達成してはいなかったものの、顧客や市場をつかみ、成果が上がっているという点ではそれなりの結果を出してきた |
ただ、いつまでも同じビジネスをやっていたら次第に立ち行かなくなるわけで、10年後に生き残ってゆくための、いわば第二の創業が必要であるとし、この第二の創業の方向性として、"Internet of Things"(IoT)が大きなトレンドになると説明し(Photo04)、ここに注力してゆくことを明らかにした(Photo05)
Photo04:狭義には今のところM2Mが所謂IoTの範疇に含まれる主要なサービスであるが、今後はこれが広がってゆくことは明白で、このマーケットを取りに行きたい、というのが同社の次の方向性である |
Photo05:今はまだそうなってはいないが、このIoTのグローバルリーダーを目指すことを目標にするとの事 |
こうした方向性の1つのトライアルがiRemoTapである。iRemoTap自身は、単に消費電力を測定して、これをWi-FiでWebサーバに投げる(POSTする)だけの機能であるが(Photo05)、こうしたデータをサービスプラットフォームに集約し、統計化を行ってゆく中で、電力の消費パターンなどから、もっと色々な情報を分析することが可能、としている(Photo06)。こうしたプラットフォームはそもそも現在存在しておらず(Phoot08)、ここを手がけてゆくことで、ユビキタスの名前に示されるサーバ側プラットフォームの技術をサービスの形で提供してゆきたい、という方向性を明らかにした。
こうした方向性の一環として発表されたのが、SASSORとの協業である(Photo09)。同社の石橋秀一氏(Photo10)によれば、同社のELP Liteによって消費電力の見える化と、これを元にしての電力利用効率のアップを促進が可能になる、としている。
ちなみに本来はELPというサービスを予定していたが、その一部を前倒ししてサービス提供を開始するということで、ELP Liteとなったそうである。ちなみに当初の提携はそんなわけで、ELP LiteがiRemoteTapのデータを収集できるようにする、というものだが長期的にはもっと沢山の情報を収集、分析できるようなプラットフォームを両社で開発する方向を考えていると三原氏より補足があった。
ここで改めて話は第二創業に戻った。現行はネットワークスタックとデータベース、それとQuickBootというミドルウェアが主な柱であるが、今後はサービスプラットフォーム事業を立ち上げてゆくと共に、ミドルウェアとの連携を図ってゆくという話で、こうした拡大においてユビキタスが得意でない分野については今回のような業務提携、必要ならばM&Aも考慮してゆくとの事だった。
Photo14が中期計画であるが、今年はおそらく売上高・利益と共に落ち込むことは免れないものの、この先は堅実に売上高・利益共にのばしてゆきたいとの事。分野別に関して言えば、ニンテンドーDSに対するロイヤリティが、3DSの登場に伴い減少してゆくのは避けられないようで、これをその他の分野で補う形にしてゆきたい、としている。こうしたミドルウェア製品で堅実に稼ぎつつ、あらたにサービスプラットフォーム分野に積極的に乗り出してゆきたい、と説明された(Photo16)。
さてそのiRemoTapであるが、当初の価格はいわゆるテーブルタップと比較すると当然高価であり、このため実際には業務用が先行すると説明された。具体的にはたとえばオフィスで部署ごとあるいはセクションごとに消費電力を管理したいといった要望が既にオフィスの電力設備を提供するメーカーから多く寄せられているそうで、こうした用途では多少コストが高くても問題ないからだ、という話であった。
また提供が間に合わない理由としては、内部のWi-Fiコントローラを新型に切り替える他、安全性の検証に時間を要するためと説明された。そうなると逆にSASSORはなぜ間に合ったのか? という話であるが、石橋氏によれば電力測定をクランプ式で行っており、つまり直接AC 100Vにつながる回路がないので、PSE法(電気用品安全法)に対応する必要がなく、これが機器提供までのリードタイム短縮につながったそうである。もっとも、それがゆえにPhoto11の一番左の写真で判るとおり、電力測定を行う子機に別途ACアダプタが必要になっているという、ちょっと不思議な構成になっているわけだが。このあたりの割り切りはユビキタスのiRemoTapとの大きな対比を見せている。
ちなみにiRemoTapはあえてWi-Fiを使っての接続になっているわけだが、これに関しては「スマートフォンの普及によって家庭内にWi-Fiの環境があるのが普通になってきており、こちらのほうが便利ということでWi-Fiにした。ZigBeeの場合は、別途Gatewayを用意する必要がある」(ユビキタスの関係者)との話で、また三原氏も「ZigBeeはSASSORがソリューションを提供しているので、そちらにお任せしたい」との話であった。
ちなみに会場ではiRemoTapとSASSORの親機・子機も展示されていた(Photo17~19)。