Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツは、組込制御向けマイコン「C2000」として32ビットデュアルコアマイコン「Concerto(コンチェルト)」シリーズを発表した。
同製品の発表に際し説明を行った同社営業・技術本部マーケティング/応用技術統括部 組込みプロセッサ マーケティング MCUグループのグループリーダー 佐々木幸生氏は、同社の組み込みプロセッサポートフォリオについて、「16ビットの低消費マイコン「MSP430」、32ビットリアルタイムコア「C2000」、Cortex-M3搭載の「Stellaris」といったマイコンから、Cortex-A8/ARM9搭載の「Sitara」、DSP「C6000/C5000」などがある」と幅広いマーケットをカバーしていることをアピール。特に、エネルギー関連のアプリケーションに向けたソリューションの拡充を現在進めており、スマートハウスやスマートビルディング向けに通信とリアルタイム制御が重要になるということで、今回、通信およびリアルタイム制御を1チップに統合したソリューションチップ"Concerto"を発表したという。
C2000はデジタル電源やサーボ/モータ制御など向けマイコンで、バリューライン用に固定小数点の「Piccolo」(一部、浮動小数点対応)、ミッドレンジ用に浮動小数点の「Delfino」があり、Concertoはその上位に位置づけられる製品となっている。
同製品は3つのテーマで開発された。1つは、C2000のマイコンコア「C28x」が得意とするリアルタイムの制御とARM Cortexの得意とするホスト通信機能を1チップ化するということ。それぞれの得意なペリフェラルを用意してあり、別々のチップとして開発を行うことが可能となっている。
2つ目は、エラーの検出や訂正機能を持たせたことで、これにより事前の事故防止が可能となった。そして3つ目は、開発キットとして、従来のC2000プラットフォームの資産を活用した開発が可能としたことで、開発コストを低減することが可能となっている点だ。
標準的なマイコンを1つ使用する場合、制御と通信という、ユーザーの使いたい機能に対し、性能面で一部妥協をしないといけないことがあった。また、2つのマイコンを用いて制御と通信を別々に行うと、それぞれ個別に性能は出るようになるものの、マイコン間の通信をチューニングをしないと、レイテンシなどの発生が生じ、最終的なパフォーマンスがでないという問題があった。Concertoでは、2つのプロセッサを内部バスでやり取りするため、レイテンシなどを気にせずに高速にデータのやり取りをできるようになるという。
従来ソリューション(1つのマイコン、もしくは2つのマイコン)による制御と通信では、ボトルネックがあり、性能を出しづらかったというのが同社の見解であり、Concertoを用いることで、それを解消できるとしている |
主な適用アプリケーションは、産業機器/制御機器などのモータコントロールとモータの状況や故障診断などのリモート監視や、サーバにおける電源として、電力の制御による負荷の分散処理や、UPSとの連動に対するインテリジェントな判断などを想定している。特に産業機器では信頼性が重要となることから、機能の冗長性としてクロックを2つ搭載し、互いに監視することができるようになっているほか、A/Dコンバータも2つ搭載するなどの工夫が施されている。加えて、過電流・過電圧保護用コンパレータなども搭載している。
プロセスとしては65nmプロセスを採用。コントロール側は最大150MHz動作の32ビットFPU「c28x」を搭載しているほか、VCUを搭載し、CRC、FFT、複素乗算、ビタビなどでの演算能力強化が図られている。一方、ホスト側としては、ARM Cortex-M3を搭載し、10/100Ethernet MAC、USB OTG Full SpeedのPHY、UART、SSI、I2C、CANなどのインタフェースを活用することが可能。各コアの共有として、12ビット10チャネル、4MSpsの3チャネルコンパレータを2つ、パリティRAMとして2KBメッセージRAMを2つ、最大64KBのバッファ用メモリなどが搭載されており、2KBのメッセージRAMは片方がリード/ライト(C28x側)→リード(Cortex-M3側)、もう片方がリード/ライト(Cortex-M3側)→リード/ライト(C28x側)という仕掛けとなっており、64KBのRAMはホスト(Cortex-M3側)上でどちらのコアにどれくらい振り分けるかの設定が可能となっている。
アプリケーションのブロック図としては、各コアに対し、ヘッダファイル、ライブラリ、OSやミドルウェアなどとなり、その上でユーザーが開発したアプリケーションが動作する形となる。加えて、各コア間通信はIPCメッセージAPIによりやりとりを行うほか、内部的にSPIやUARTを構成できるため、各コア間で、そういったシリアルインタフェースを介した通信を行うことも可能となっている。
なお同製品は、144ピンQFPパッケージでサンプル出荷を開始しており、1000個受注時の単価(参考価格)は6.99ドルとなっている。また、検証キットも提供されており、こちらの参考価格は139ドルで、サンプル品ならびに各開発キットのリードタイムは約4週間の見込みとなっている。