計測機器ベンダAgilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは、HDMIプロトコル・アナライザ&ジェネレータ「U4998A HDMIプロトコル/オーディオ/ビデオ・アナライザ&ジェネレータ・モジュール」を発表した。

HDMIプロトコル・アナライザ&ジェネレータ「U4998A HDMIプロトコル/オーディオ/ビデオ・アナライザ&ジェネレータ・モジュール」

同製品はHDMI Compliance Testing Specification(CTS:コンプライアンス試験仕様)1.4aで定められたTMDSプロトコル推奨測定器「N5998A」の後継機種として位置付けられるもの(N5998Aはすでに販売終了)で、CTS 1.4に記載されたN5998Aを用いるすべての測定を行うことが可能となっている。また、N5998Aにはなかった機能なども追加搭載されている。

U4998Aの各部位の説明

具体的には、接続インタフェースをPCI Expressへと変更したことでHDMI 1.4aの最大データレートである3.4Gbpsへの対応が図られ、4K2Kの2.97Gbpsの測定が可能となったほか、N5998Aでは外部接続であったクロック周波数カウンタを内蔵した。加えて、パッシブ・モニタリング・オプションとして、デバッグに有効な「Pass-throughモード」およびコンプライアンステストの効率化を実現する「Mirrorモード」が用意されている。

HDMI 1.4aの特長とHDMIの信号構造

HDMIではコンプライアンステストが義務付けられており、セルフテストもしくはATC(Authorized Test Center)でのテストが必要だ。日本ではパナソニックおよびソニーにて実施することができる。U4998Aを用いたHDMI 1.4aのコンプライアンステストでは、TMDS信号のコーディング、パケット構造、ビデオフォーマット、オーディオフォーマットなどが正しいかどうかをチェックする。特に、HDMI 1.4aで追加された仕様については、それだけ(従来、認定を受けていた既存部分の再テストは不要)をテストするだけでよく、例えば3Dビデオフォーマットや4K2Kのテストのみ、といったことも可能となっており、例えば3D出力テストでは、左画像と右画像を左右もしくは上下に表示して(ビデオフォーマットにより規定)比較することで、テストを行う。

HDMI 1.4aの3Dフォーマットの種類により左右の画像の表示位置が決まる

そうしたテストの効率化を目指して用意された2つのオプションを含め測定モードは4つ用意されている。標準の「Capture(Analyzer)モード」と「Generatorモード」の2つはN5998Aにも搭載されていた機能だ。

標準の2つのモードに加え、オプションとしてテスト効率を向上できる2つのモードを用意

オプションの1つであるPass-Throughモードはソース機器(カメラなど)とシンク機器(モニタなど)のデバッグに用いるモードで、U4998Aはソースとシンクの間に挟むが、無い状態と同様の接続となり、DDCの通信はソース機器-シンク間で実施され、ソース機器はシンク機器のEDIOを読み、U4998Aはソース機器-シンク機器間のTMDSデータのキャプチャおよび解析を行うため、モニタで映像を見ながら、機器間の不具合解析や不具合の切り分けなどを行うことができるほか、オプションのロジックアナライザのオフラインビューアで解析することで、より詳細な解析も可能となっている。

Pass-Throughモードを用いたデバッグの概要

一方のMirrorモードは、U4998AでEDIOを設定、ソース機器-U4998A間でDDC通信を行い、シンク機器にはU4998Aで受信している信号がそのまま出力されるため、ソース機器のコンプライアンステスト時にU4998Aが受信している信号をモニタできるというものとなっている。

Mirrorモードを用いたデバッグの概要

加えて同製品を搭載するシャーシには最大2枚のU4998Aを搭載することが可能であり、一方をGeneratorモードで、もう一方をCapture(Analyzer)モードで動作させ、テスト効率を向上させることも可能となっている。

2枚のU4998Aを活用することで、さらにテストの効率向上が可能になる

なお、価格は本体が576万6966円(税別)、Pass-ThroughおよびMirrorモードのオプションが各30万3638円(税別)となっているほか、シャーシが82万3639円(税別)、PCI Expressカード/アダプタが2万141円(税別)からとなっている。

4K2Kで必要となる2.97Gbpsの測定も可能。右は実際のデバッグ事例で、ソースのレコーダからの音声データのサンプリングクロックとデータ送信の同期にズレがあったが、片方のテレビではそれを許容して流し、もう一方のテレビでは、データどおりに音が途切れて流れていたという。このテストの場合、HDMIとしては途切れていた方が正しい結果(ソース側のデータに従う)で、補正して音声を流すほうがコンプライアンスを遵守していないという結果となる

U4998Aからテレビを指定したEDIOをビデオカメラに送信、カメラで撮像した映像をキャプチャ(バッファフレームの分量はメモリ容量によるとのこと)、どういった周波数、フォーマットで送ったのかを定義し、各モードでチェックを行う。また、目視で16:9などの比率や、カラーチェックを行い、おかしければフォーマットの確認を行うといった作業を行う。この場合、右の画像は色がおかしいので、調べるとフォーマットが違っていることが判明した、という形のものになっている