シャープは6月8日、家庭内の家電機器をネットワークで接続、HEMSを活用し、その消費電力を液晶テレビやタブレットで見ることができ、かつボタン1つで節電ができることを目指した「シャープ・エコハウス」の実証実験を開始したことを発表した。

同エコハウス内には、同社の液晶テレビやLED照明、エアコン、冷蔵庫、電子レンジなどの各種家電が各部屋に設置されており、それぞれの電力消費状況などを逐次、同社のタブレットを改良したホームインテリジェントタブレットや液晶テレビの画面で確認することが可能なほか、状況に応じた電力の自動的な削減(節電)や調光による空間のコントロールなどを図ることができる。

エコハウスのコンセプトは「節電を極める家」だが、日本における家庭のエネルギー消費量は、資源エネルギー庁発行のエネルギー白書2010をへースに同社が算出した数字で総量14725×1025Jに対し「家庭」が14%、「業務」が20%、「産業」が42%、「運輸」が24%となっているが、その中で、電気エネルギーだけを見た場合、家庭の占める割合は総量9919億kWhの29%におよぶという。

日本の各分野別のエネルギー消費量(左)と電力のみを取り出した場合の消費量(右)

また、家電の消費電力を機器別に見ると、1世帯あたりの年間CO2排出量に2078kg(平成15年度)に対し、エアコンが25.2%、照明器具が16.1%、冷蔵庫が16.1%、テレビが9.9%と、上位4製品だけで7割近くを占めている。

家庭における電気機器の消費電力割合

こうした状況の中、節電を実現する一番手短な方法は対象機器を買い換えること。「当該する4種類の家電は10年前のモデルに比べて、現在のモデルを活用すると合計で30%程度を電力消費を削減することができる」(同社常務執行役員 研究開発本部長 兼 知的財産権本部長の水嶋繁光氏)とする。また、それらの機器がどの程度、実際に電力を消費しているかを見る「電力の見える化」による意識強化による15%の節電効果。そして、そうした家電のスイッチを自分の手でわざわざつけたり消したりする事なく、かつ生活における快適性を維持することを目的にHEMS(Home Energy Management Sysytem)を活用することで、さらに10%削減できるという。ここまでは、今でも家庭でやろうと思えばできる話だが、これで55%の節電になる。

仮に10年前から使用している家電(エアコン/照明/冷蔵庫/テレビ)を現在の機種やLED照明に変えるだけで、電気代を30%削減することが可能となる

同社ではさらに、太陽電池による発電と蓄電池による蓄電ならびに電気自動車(EV)への蓄電とその電力の家庭内での活用によりさらに35%の削減効果を、そして太陽電池や蓄電池から提供される直流(DC)を、現在は交流(AC)に変換しているが、そのロスが大きいため、DCをダイレクトに家電に供給し稼働させるDC家電による効率向上でさらに10%の電力削減が可能としており、これで100%の電力削減となることを強調する。「これが実現できれば、電力会社の系統電力につながってはいるものの、それにできる限り依存しないで、電力の消費をゼロ化することができる」(同)とする。

家庭で「節電を極める」と系統電力を100%使用しない状況を作ることができる

しかし、現状の消費電力を100%削減したからと言って、電力会社から100%電力を購入しないで済むということはない。太陽電池による発電は天候が悪かったり、夜間は発電できないし、蓄電池やEVのバッテリの容量にも限度があるためだ。

また、節電もモチベーションを高く維持しつつ続けないと、やがて破綻する。そうした問題を解決しようというのが、同社のエコハウスでの実証実験の1つでもあるスマート化した家電をHEMSによって制御することで、「快適に過ごしつつ、節電を極める」ことができるという。

ホームインテリジェントタブレット。画面の各節電モードのボタンを押すだけで、対象機器もしくは家屋内すべての機器が指定したモードに移行する

無線通信としてZigBeeを採用したスマートタップ。これが各機器のコンセントにつながっている

その鍵は各家電のコンセントにつながるスマートタップと実際の消費電力などを見たり、操作したりできるホームインテリジェントタブレット。「見える化だけでは快適な節電を実現したことにはならない。同タブレットから節電モードのボタンを押すだけで、自動的に節電を実現しつつ、そこに居る人に即した快適性を提供する」とし、「東北、関東だけでなく、中部地域の浜岡原子力発電所の停止なども含め全国的に電力状況が厳しい状況にある日本の社会において、いち早く"電力の見える化"を実現できるソリューションを提供することで、日本企業として日本の役に立って行きたい」としており、エコハウスによる実証実験により、実用化に向けた取り組みを加速させ、一日も早く、よりエコかつ快適な生活を実現できる家電を提供していくとした。

HEMSによる家電の消費電力の自動制御を行うことで、人力による手間を省いて、快適な生活を維持しながら節電を実現することが可能となる