人工水晶を利用した太陽電池開発に取り組んできた早稲田大学(早大) 理工学術院の逢坂哲彌教授と国際先端技術総合研究所は、特殊処理した人工水晶を電極に塗布することで、湿式であるグレッツェル型の色素増感型太陽電池の変換効率を向上させることに成功したことを明らかにした。

グレッツェル色素増感型太陽電池の仕組みの模式図

変換効率の目安となる短絡電流が10~40%、平均で20%アップすることが確認された。実験では1cm角のグレッツェル色素増感型太陽電池を簡易作製し、短絡電流を測定したところ、未塗布の電池は1.6~2.5mAであったのに対し、人工水晶を入れ塗布した電池は2.3~3.1mAの値を示したという。

太陽電池特性で比較した人工水晶塗布の効果の例

現在、太陽光発電など自然エネルギーの利用に関心が高まっているが、自然エネルギーによる発電はコスト面の課題が大きい。太陽電池分野では、乾式の結晶Si電池が主力だが、CdTe型、CIS型などの化合物半導体を活用した高効率型も注目されつつある。一方、湿式の電気化学的グレッツェル型は、乾式に比べて低効率だが、コスト的には乾式より1桁安くできる利点があり、複数のメーカーが同方式の実用化に向けた研究を進めている。

こうした状況において、今回、酸化チタン(TiO2)型でない酸化シリコン(SiO2)型の水晶を利用して、それなりに利用できる可能性が示せたことは、高層ビル型のガラス一体型太陽電池などの応用に期待を示したことになり、研究グループでは、低コスト・低エネルギーで生産できる色素増感型太陽電池が注目されているが、同技術により安価な人工水晶を用いて色素増感型太陽電池変換効率の向上ができたということは、新しい応用分野での太陽電池の普及につながるきっかけができたと説明している。