Mentor Graphicsは、電装システム/ワイヤ・ハーネス設計ツール製品群「Capital」の拡充を発表した。これにより、従来製品がこれまで自動車、航空宇宙、軍事産業向けに提供してきた電装システム/ワイヤ・ハーネス設計フローを、上流と下流の両方向に拡張することが可能となり、品番構成の複雑さ、ハーネス製造、車両のサービス・マニュアル作成/メンテナンスといった課題に対応できるようになるほか、製品定義から保守整備までを包括的にカバーできるようになると同社では説明している。
今回、同社では3つの製品をCapitalに追加した。そのうちの2製品は、品番構成の複雑さを管理することを目的としたもので、1つ目の「Capital Level Manager」は、品番構成の複雑さによって生じるコストを最小限に抑えるもの。機能ベースの設計パラダイムに基づき、マーケティングとエンジニアリングの間に定量的リンクを提供し、品番構成の複雑さとその結果生じるコストを数値としてフィードバックする。また、同ツールでは、「付け捨て(ギブアウェイ)」と呼ばれるプロセスにより品番構成をシンプル化する機能や、付け捨て後の品番構成が当初の製品マーケティング計画に適合していることを確認する検証機能が用意されている。主にプロジェクト初期段階のプラットフォーム定義で使われるが、新たなオプション機能を追加した場合の品番構成の複雑化による影響を評価し軽減する目的で使用することも可能だ。
また、2つ目の「Capital ModularXC」も品番構成の複雑さに有効な製品で、従来の複合(スーパーセット)パラダイムに加え、特定のオプション機能に関係するハーネス・モジュールを組み合わせてさまざまな品番構成を組み立てる手法であるモジュラ・プロセスもサポートしている。モジュールを組み合わせてハーネスを構成するのは、アルファベットを組み合わせて単語を構成するのと似ており、アルファベットに一定の「スペル規則」があるように、部品同士の互換性を維持しながら追加の部品を管理できるようにモジュールの定義を自動化し、モジュラ設計の「組み合わせ規則」を適用する役割を果たす。また、「モジュラ合成」と呼ばれる既存のCapitalテクノロジと組み合わせることで、フロントエンドからバックエンドまで自動化されたモジュラ型フローも実行することが可能となっている。
同ツールは、フォームボード設計などハーネス製造業務をターゲットとした既存のCapitalツールを補完するもので、同社では製造設計業務をサポートすることを目的としたCapitalツールの新製品も年内に発表する予定としている。
そして3つ目は「Capital Publisher」で、電装システムのドキュメント作成や車体保守/修理サービスにかかる時間を短縮することを目的としたツール。同ツールは、回路図、ワイヤ・リスト、ロケーション・ビューなど電装システム設計に関するデータを1つに集約し、高度なフォーマットの電子ドキュメントとしてパッケージ化してサービス・マニュアルの作成作業を合理化することが可能。図面合成やスタイリングなど、いくつかのテクノロジを組み合わせており、上流のCapital設計ツールまたはサードパーティ製品から電装システムの設計データを受け取り、電気的にインテリジェントなアプリケーションとして、受け取った設計データに対して妥当性確認や再パーティショニングを実行し、データも(設計時点のデータではなく)実際に製造された状態のデータとして表示することが可能となっている。
また、シグナル・トレース機能や関連オブジェクトのナビゲーション機能などの機能が用意されており、複雑な電装システムのトラブルシューティングを従来に比べ簡単に行うことが可能なほか、整備、サービスに提出されるデータは特定の車両に関連のあるもののみを表示できるため、車両構成の種類が多い場合でも保守整備の作業をよりシンプルに実行することができる。
これら3つのツールを用いることで、Capitalは従来の電装システム/ワイヤ・ハーネス設計の枠を超え、定義(デファイン)、設計(デザイン)、製造(ビルド)、保守整備(サービス)の機能を包括的にカバーできるようになった。同社では、引き続きCapital以外の製品との統合機能にも力を注力していくとしており、例えば今回は、Capitalと組み込みソフトウェア、ネットワーク設計、電気設計を含めた拡張EE設計フローを実現する「Volcano Vehicle System Architect」とメカトロニクス・システムのシミュレーションをサポートする「SystemVision」との統合も標準でサポートされるようになったという。