日本法人シリコン・ラボラトリーズ 代表取締役社長の大久保喜司氏 |
米Silicon Laboratories(Silicon Labs)は2011年6月1日、都内で記者発表会を開催し、製品ポートフォリオの大幅拡充と今後の事業展開について発表した。同社は2011年1月に発表したSpectraLinearの買収により、ハイボリューム/ローコストアプリケーション向け低消費電力・プログラマブルクロック&バッファICのラインナップを大幅拡充し、さらなる事業の拡大を図っている。
Silicon Labsが手掛けるタイミング・デバイスはオン/オフボタンの付いている電子機器にすべて内蔵されており、市場の成長は継続している。今後もこれらの電子機器が増加することや、PCのCPUへのクロック取り込みなど新規参入の機会が生じている。同社日本法人シリコン・ラボラトリーズ 代表取締役社長の大久保喜司氏は「当社のようにミクスドシグナルICに長けたメーカーにとっては非常に魅力的な状況」と語り、今後の成長への期待を示した。
タイミング・デバイスのワンストップ・ショップを構築
タイミング・デバイスの市場は、周波数制御とクロックICに分かれる。周波数制御の市場は水晶発振器をはじめ、クリスタルを削って周波数を出すことに長けた発振器メーカーがサポートしている。クロックICの市場は、ローエンドおよびミッドエンド向けは半導体メーカーがICでサポートしている場合が多く、ハイエンド向けはディスクリートを中心にしたICソリューションが採用されている。
Silicon Labsは、従来からハイエンドおよびミッドエンド向け製品をサポートしていたが、SpectraLinear製品の追加と、新たなローエンド向けクロックIC製品を投入することで、ハイボリュームのローエンド市場についてもサポートしていく。これにより、周波数制御とクロックICについてハイエンドからローエンドまで1社でサポートが可能となり、タイミング・デバイスのワンストップ・ショップ体制を構築したこととなる。
100品種以上の新製品を投入し、ハイボリューム向けを強化
SpectraLinearの買収を機に注力していくハイボリューム/ローエンド向けソリューションとしては、まず100品種以上の製品群をSpectraLinearから取り込むことになった。SpectraLinearの製品群には既存のSilicon Labs製品と同様にプログラマブルな製品があるため、ポートフォリオの拡充には最適な製品だったという。
民生向けでは、日本が得意なゲームやデジタルスチルカメラで大手ユーザーに採用実績がある。また、通信用のクロックジェネレータやバッファ、組み込み用途では、x86向け、PCI Expressのクロックもサポートしている。
また、Silicon Labsが従来から進めている取り組みとしては、MEMS共振器やAny-Frequency 8出力クロックなどがある。MEMSについては、2010年4月にMEMS技術のスタートアップ企業であるSilicon Clocksを買収しており、MEMSとCMOSを組み合わせた独自のCMEMSプロセスによるタイミングソリューションの開発を進めている。詳細についてはまだ公表できる段階にはないが、2012年の製品化を目指しているという。
Silicon Labsの2010年の売上規模は5000万ドルで市場シェアは第10位。堅調に成長する市場に合わせて、同社では2011年も2桁後半の成長を予定している。
今回の製品ポートフォリオの拡充に加え、Silicon Labs独自のMEMS、DSPLL、MultiSynth技術を発展させ、プログラマブルなデバイス特性や性能とコストを最適化させたソリューションを提供していく。また、Webサイトによるカスタマイズ対応により、2週間以内のリードタイムが可能な製品群を拡充していくといった取り組みにより、売り上げをさらに伸ばし、2014年にはタイミング市場でトップ2に入ることを目指すという。