日本アイ・ビー・エムは6月1日、顧客を企業活動の中心に捉え、マーケティング・販売・サービス・購買など商取引のすべてにわたり、顧客の要望に迅速かつ柔軟に対応することを目指したビジョン「スマーター・コマース」を発表した。同ビジョンは、同社のビジョン「Smarter Planet」を具現化するビジョンの1つとなる。
執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業 アプリケーション開発事業 山口明夫氏は、スマーター・コマースについて、「当社は『Smarter Planet』というビジョンを打ち出しているが、それを実現するビジョンの1つに『スマーター・シティ』があり、北九州市と共同で実証実験を開始している。スマーター・シティと同様に、スマーター・コマースもSmarter Planetを実現するビジョンで、地球に優しく、顧客に快適な商取引を実現していく」と説明した。
同氏は、スマーター・コマースの提唱を始めた背景として、現在、消費者を取り巻く環境が変化するとともに、消費者のニーズも変わってきていることを挙げた。「『倹約は美徳』『エコはよいこと』といったように、消費者の意識は変化している。また、ソーシャルネットワークによってクチコミの信頼性が向上し、モバイルコマースによって『いつでもどこでも』買い物ができる環境が求められるようになった。こうした状況のなか、スマーター・コマースでは顧客を中心に置いた商取引を実現していく」
スマーター・コマースの概要については、グローバル・ビジネス・サービス事業 デジタル・トランスフォーメーション バリューネット事業部長の久保田和孝氏が説明した。
スマーター・コマースは、「マーケティング」「販売」「サービス」「購買」という商取引の領域に対して、「顧客視点の変化対応力」「クロスチャネルの統合」「デジタルとリアルの融合」を提供していく。
例えば、クロスチャネルの統合では、実店舗、Web店舗、コールセンターといった複数のチャネルをまたがっての商品検索、注文、状況確認、変更、返品、返金といった商取引のすべてのプロセスを統合管理する。
「消費者を取り巻くいろいろな環境が変化するのに伴い、商取引の仕組みの構築にもスピードが求められており、それにこたえられる基盤を提供していく。『コマース』という単語が名称に含まれているが、eコマースは機能の一部であり、商取引にまつわるすべての業務全体をカバーする」と同氏。
理事 ソフトウェア事業 インダストリー・ソリューション事業部長の田崎慎氏からは、スマーター・コマースに対する同社の取り組みについて説明がなされた。
同社はスマーター・コマースに対する投資として、4つのプロセスをサポートするため、スターリングコマース、ユニカ、コアメトリクスの3社を買収しており、昨年だけで約25億ドル投資していることになる。グローバルで、1,000名規模の専門家を育成している最中であり、国内でも組織横断的な専任チームを立ち上げ、事業を推進していく。
また同氏は、「スマーター・コマースはIBM1社でできるものではない」として、7月中にはパートナープログラムの立ち上げをアナウンスする予定だと述べた。
スマーター・コマースは先の買収した3社の製品を中心としたソフトウェアによって実現される。「購買のプロセスで消費者の意向を感知する役割を担うユニカのマーケティングマネジメントソリューション、スターリングコマースの統合コマース&フルフィルメントソリューションは提供が開始されている。また、コアメトリクスのオンライン・マーケティング・プラットフォームも近日中に提供される予定だ」
スマーター・コマースのスターターキットとして、「クイック診断プログラム」(500万円から)、キャンペーンマネジメントの効果を検証するサービス「Express Service - UNICA -」(300万円から)が提供される。