アルバック理工は、90℃のお湯で3kW級(100V、30A)の発電が可能な可搬型小型発電システムを開発したことを発表した。
原子力発電所の停止などによるエネルギー電力需給バランスの崩れなどから、省エネルギー技術の開発と未利用エネルギーによる発電技術の実用化が求められている。特に、150℃以下の低温熱源は、工場廃熱や温泉熱、太陽熱などが存在するが、ほとんどが未利用もしくは熱としての利用に限られている。その一方で、低温熱源を利用した発電システムの実用化も検討されているが、いずれのシステムも発電規模が50kW以上と大きいため、大量の熱が必要で、設置場所や設置費用などの初期コストの問題から、導入先が限られるという課題があった。
同社が今回開発した発電システムは、150℃以下の低温熱源で、3~12kWの小規模発電を軽トラックで運搬可能なサイズ、かつ低騒音により、熱源に手軽に設置することを目指したもの。3~12kWの電力は一般家庭に換算すると、5~20世帯分の消費電力に相当するという。
試作機は、100mm×800mm×1400mmのサイズで、重量は約200kg。液体と気体の二相で存在する作動媒体を用い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するプロセスの1つであるランキンサイクルからなる、3kW級の可搬型小型発電システムとなっている。
お湯と冷却水を用いて発電試験を行ったところ、例として、湯温91℃、湯量43l/min、温度差69℃(冷却水は22℃)で、エネルギー回生効率は7.2%、発電出力3.8kWを達成したという。
同システムは、発電機一体型スクロール膨張機(エコスクロール膨張機。偏心旋回駆動方式のスクロール膨張機:Eccentric Orbiting Scroll Expander)で、同社の独自技術をもとに開発を行い、低機械損失、高密閉膨張室、低騒音を実現したという。
また、同技術は、発電システムのほかに、ハイブリッド車、電気自動車用電動コンプレッサ、燃料電池用空気ブロア、真空ポンプなど多方面での利用が可能であり、同社では、今後、現場でのフィールド試験および耐久試験を行い、製品化のための基盤技術を蓄積し、順次市場に投入していく予定としている。