Analog Devices(ADI)は6月1日、ワイドバンド・パッシブミキサとしてシングルチャネル品「ADL5811」とデュアルチャネル品「ADL5812」を発表した。2製品ともにすでにサンプル出荷を開始しており、2011年第3四半期からの量産出荷を予定、1000個受注時の単価はADL5811で8.03ドル、ADL5812で10.98ドルとなっている。
2製品ともに周波数範囲は700MHz~2800MHzを実現しつつ、+24dBmのIIP3(入力3次インターセプト)、11dBmのSSBノイズ指数、7dBの電力変換ゲインを提供することが可能で、これらの性能仕様について、全動作周波数範囲にわたり提供可能としている。
トランジスタを用いるアクティブミキサは広い帯域に対応できるが直線性が劣化しやすいという問題があった。一方、ダイオードを用いるパッシブミキサは直線性は良いが、入出力にフィルタをかけて帯域制限をしないといけないという課題があり、従来は帯域幅と直線性の兼ね合いにより、要件に応じてトレードオフでミキサを選択していた。
今回の2製品は、パッシブミキサとして新たに3つの技術を搭載した。1つ目はリミットLOアンプの搭載。これにより、既存のナローバンド(狭帯域)ミキサに比べ、複数のパッシブミキサを使用する場合に比べ消費電流を抑制しつつ、250MHz~2760MHzの帯域幅にわたり、立ち上がり時間の早い方形波を生成することが可能となった。
2つ目は、プログラマブルなRFバランの集積。入力側に多数のバランを設置することで、700MHz~2800MHzの周波数範囲に1チップで対応することを可能とした。周波数はSPIにて制御可能で、これにより、同製品のみで、携帯電話のLTE/WCDMA/CDMA/GSMといったすべての帯域をカバーすることが可能となる。
3つ目は、パッシブミキサが生成する不要な合成波によりIFアンプの直線性が低下し、早期飽和の原因となる問題に対応するためのプログラマブル・ローパスフィルタの導入。これにより、不要なサイドバンド(側帯)の振幅によるIFアンプの早期圧縮を低減することが可能となり、直進性を高めることが可能となった。
アナログ・デバイセズのインダストリー&インフラストラクチャ・セグメント コミュニケーショングループ フィールドアプリケーションマネージャーである日野原成輝 |
「業界全体として広帯域無線プラットフォームの需要が増している。背景にはスマートフォンによる通信が増えており、そのための通信帯域確保と、通信サービスベンダとしては700MHzであっても、2.8GHzでも1つのプラットフォームでサービスを提供したいというニーズがある」(同社日本法人であるアナログ・デバイセズのインダストリー&インフラストラクチャ・セグメント コミュニケーショングループ フィールドアプリケーションマネージャーである日野原成輝氏)ということで、同社としても500MHz~1700MHz向けミキサや、1200MHz~2500MHz向けミキサ、2200MHz~2700MHz向けミキサなど、周波数の違いによって製品展開をしていたが、今回の2製品を活用することで、1つのミキサを使うだけでどの周波数に対応できるようになったほか、外部の整合回路の最小化やバランの設計などが容易になるため、設計の簡素化と機器の小型化というメリットもあるという。
このほか、IIP3を+3dBm改善可能な機能なども搭載しており、必要に応じてそうした対応も実施することが可能だ。
なお、2製品ともに同社のIFデジタル可変ゲインアンプ「AD8375/6」または差動アンプ「ADL5561/2」およびシンセサイザシリーズ「ADF435X」とあわせて組み込むことで、レシーバ・シグナルチェーンを構成することができるようになると同社では説明している。