世界最大規模のデータセンタービジネスを展開する米エクイニクスの日本法人であるエクイニクス・ジャパンは5月25日、ホテルオークラ東京において、「今後の経済動向とシステム管理を考えるITセミナー」を開催。企業情報システム部門や経営企画担当者、経営者など約50人が参加した。
セミナーでは、エクイニクス・ジャパン 代表取締役の古田敬氏が、「国内分散と海外分散システムにおけるデータセンター活用法」をテーマに同社の戦略などについて語り、今年6月1日には東京第3データセンターを開設予定、さらには、東京以外のエリアにもデータセンターを開設することを検討していることを明らかにした。
エクイニクスは、全世界12ヵ国35都市、95ヵ所にデータセンターを持ち、データセンターの延べ面積は55万8,000平方メートルにも及ぶ。「データセンターのフロア面積としては世界最大になる」(古田氏)という。
10億ドルを超える年間収益、7億ドルを超える手持ち現金を有し、2007年から2010年までに29億ドルの設備投資を行ったという。現在、日本には東京地域に2ヵ所のデータセンターを構える。顧客は世界で3,700社にわたり、日本のデータセンターを利用している顧客の半分が海外のユーザーだという。今後、日本での展開を強化する考えだ。
同氏は講演の中で、「情報通信基盤、インターネット基盤はすでにグローバルな基盤となっており、ITに関してもグローバルにおけるコストメリットが浸透しはじめている。日本は、東日本大震災後、電力業界の不透明性もあり、グローバル市場におけるポジションが地盤沈下しはじめているのではないか。これは絶対に避けなくてはならない」と前置きした後、「分散化することで危機管理、コスト管理、パフォーマンス、最適化といった目的が達成される。震災以降、問い合わせの半分以上が東京以外にデータセンターを置きたいというもの」と主張した。
また、「IT産業では、過去の歴史のなかで、集中と分散が交互に訪れているが、クラウドの世界では、分散と集中という議論は意味がなくなる。周期的に訪れるという考え方は収束してくることになるだろう。壁の向こう側は集中しているようにいわれるが、実際にはクラウド環境では分散したデータセンターで運用されている。集中と分散のハイブリッドがクラウドの世界では標準になる」と語った。
同氏は、データセンターの構成要素についても言及した。「データセンターは、ホストとなるコンピュータを設置する場所、Webコンテンツを格納する場所といったように、利用者の立場によって言い方は異なるが、不動産、建設によって構成されるスペース、企業のコンピュータリソースであるITアウトソーシング、専用線やインターネットなどのネットワーク、安定した稼働のための電力・エネルギーで構成されることには変わりはない。この4つの要素に、空調や冷却、セキュリティが加わり、すべてにおいて、ユーザー自身の用途に最適化したものを選択できる。国内、海外を問わずにデータセンターを選択できることも、最適化のための1つの要素」
震災以降のトレンドについては、「これまで想定していたものとは違うリスクが顕在化している。ネットワーク接続性、レイテンシー、コスト、環境負荷、PUE、設備の自由度、運用コスト、電力コストといった要素とともに、リスク管理の観点から、グローバルのリソースを活用することもますます重視されている」と説明した。
エクイニクスが展開するデータセンターは選択肢を提案するには最適なものであり、レイテンシーの観点でも大幅な強化を進めていると強調。北米や欧州の90%の地域において、10msの通信速度を実現していることなどを紹介した。
「株取引などの0.数秒というトランザクションにおいてもエクイニクスのデータセンターは活用されており、クリティカル性、リアルタイム性が要求される用途でも最大限の効果が発揮できるように、全世界にデータセンターを配置している。プロキシミティといわれる遅延対策とネットワーク品質がエクイニクスの特徴である」
グローバルへのデータセンターの展開は、リスク管理とともに、プロキシミティという点でも有効だというわけだ。
だがその一方で、「海外へデータセンターを移設する場合には、法律的な課題、管理リソースの問題、セキュリティの課題、そして遅延とネットワークの信頼性という課題が出てくる。コストとパフォーマンスの最適なバランスを取ることも必要だ」とするとともに、「ITシステムは、コストセンターではなく、ビジネスの成長を支援するもの。データセンターも同様の観点で捉える必要があり、こうした考え方が重要とした。