米国セールスフォース・ドットコムとトヨタ自動車は5月23日、セールスフォースの企業向けSNS「Chatter」をベースに、クルマ向けSNS「トヨタフレンド」の構築に向けて提携することで基本合意したと発表した。
トヨタフレンドは、トヨタの顧客、クルマ、販売店、メーカーを繋ぐソーシャルネットワークサービスで、自動車を利用するうえで必要な商品やサービス情報などを提供する。同サービスは2012年市販予定のEV・PHVでの開始が予定されている。
記者説明会には、トヨタ自動車の代表取締役社長の豊田章男氏と米国セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が出席した。
豊田氏は、トヨタフレンドに賭ける思いとして、「今年1月にベニオフ氏と行った会談でトヨタフレンドの構想を聞いた時、顧客にトヨタを友だちと思ってもらえるツールであり、これから100年先もクルマが使われるために必要なものだと感じた。トヨタフレンドによって、これまで『走る・曲がる・止まる』という機能しかなかったクルマに『つながる』という機能が加わることになる。また、SNSとクルマを結び付けることで、若者のクルマ離れやクルマの魅力低下を食い止めていきたい」と語った。
一方ベニオフ氏は、「今、世界では、iPodやiPad、Android端末の登場によって、モビリティが変わってきている。モビリティとSNSにおいて密接な関係が生まれており、クルマもソーシャルになる必要がある。そうすれば、SNSを介して、顧客、クルマ、サービスステーションが結び付き、サービスが向上する。その結果、売上も伸びるだろう」と説明した。
今回のセールスフォースをSNSのパートナーとして選んだ理由について、「ビジネスとしてもともとクラウドに興味を持っていたが、よく理解していなかった。ベニオフ氏に今回の提携に関するChatterの取り組みを見せてもらい、クラウドの効果に驚いた。また、ベニオフ氏の『クルマが話す』という独創的な発想とChatterのセキュリティの高さに魅力を感じた」、と豊田氏は述べた。
トヨタは今年4月にマイクロソフトとWindowsベースのテレマティクス向けグローバルクラウドプラットフォーム「トヨタスマートセンター」の構築を発表しているが、このトヨタスマートセンターとトヨタフレンドは連携することになる。トヨタスマートセンターが家庭やクルマから収集した情報に基づいて生成された情報がトヨタフレンドに提供される。
マイクロソフトに続いてセールスフォースと提携を結んだことについて、豊田氏は「年初に事業方針としてグローバルの企業と積極的に提携を結んでいくと述べたが、どちらの提携もその一環であり、未来のモビリティ社会を実現するためのアクション。マイクロソフトはWindowsベースであり、セールスフォースはオープンという違いがある」と説明。いつもはマイクロソフトをライバル視しているベニオフ氏も「トヨタのクルマいろいろなところを走っている。だから、プラットフォームもさまざまなものをサポートする必要がある」とした。
マイクロソフトはすでにトヨタの顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービスに3 億3,500万円を出資することを表明しているが、セールスフォースも2億2,300万円を出資する。これらにトヨタ自動車の出資金である4億4,200万円を加えた合計10億円がトヨタメディアサービスに増資される。
説明会では、トヨタフレンドのデモが披露された。トヨタのプリウスを用いた「充電を確認するデモ」では、プリウスから「電池残量が少ない」というメッセージが送られ、持ち主がそれに応じて充電を行った。そのほか、点検のお知らせ、フレンドサーチのデモが行われた。