東京電力は5月20日、「当面の事業運営・合理化方針」を公表した。同社は今後、原発事故の収束に全力で取り組むほか、資産や事業の売却を含めた経営の合理化によって資金確保に注力。電力の安定供給をめざす。今回発表された"方針"には「ともすると社内論理が優先される傾向にあった」(清水社長)とされる社内風土の改革にも着手するための施策も含まれる。

経営合理化方針を明らかにした清水社長(左)と西澤次期社長

同社は今後、電気事業に必要不可欠とされるものを除き、資産の売却や事業の売却・撤退などを進めることになる。

今回発表された「当面の事業運営・合理化方針」における「経営合理化方針」の内容は以下の通り。

清水社長は同日の決算発表の場で、同社の企業文化や風土について「変えてはいけないもの(ライフラインを支える使命感など)と変えなければいけないもの」があると説明したが、今回の合理化内容は「ともすると社内論理が優先されてしまう傾向があったが、これを機に地域の皆様やステークホルダの方々など、"相手"の目線に立って物事を考えることが重要になる」(清水社長)という「変えなければいけないもの」を抜本的に改善するための施策も含まれている。

1.資産の売却

可能なものからすみやかに売却を進め、6000億円以上の資金を確保。

・不動産
電気事業の遂行に必要不可欠なものを除き売却
― 厚生施設(体育館・宿泊施設など)を全廃
― 事務所建物・PR施設などの売却を検討
・有価証券および国内外の各事業
― 電気事業の遂行に必要不可欠なものを除き、原則売却・撤退

2.投資・費用の削減

5000億円以上の費用を削減(平成23年度)。

・投資
電気事業遂行に必要不可欠なものを除き実施しない。
・費用
あらゆる費用を徹底的に抑制。
― 修繕費: 安定供給・公衆安全などを確保しうる範囲で最大限削減(減価償却費減とあわせて1800億円程度)
― 諸経費: システム開発・研究開発・研修の大幅縮小、営業関連イベントの中止などにより削減(1700億円程度)
― 人件費: 役員報酬の返上・減額(代表取締役: 全額/常務: 60%/執行役員: 40%)、社員賃金・賞与の減額(管理職: 年棒の25%/一般職: 年収の20%/役員報酬を含め540億円程度)とともに、さらなる方策も検討
― その他、燃料費などの削減(1000億円程度)

3.組織・グループ体制・人員のスリム化

あらゆる業務を抜本的に簡素化・効率化するとともに、グループ全体での本社などの管理間接機能を徹底的にスリム化。

・社内組織
業務見直しを踏まえた組織改変を検討・実施。
― 「販売営業本部」を「お客さま本部」に改組、生活エネルギーセンターを廃止(2011年6月)
― 新事業開発部を廃止(2011年6月)
― さらなる組織改変を検討
・グループ体制
電気事業に必要不可欠なもの以外の事業を大幅に縮小・再編。
・人員
― これらの取り組みを通じ、原子力事故の収束や、原発事故被害者への対応などに必要となる人員(約5,000人)をグループ全体で確保
― こうした業務の状況を見極めた上で人員削減の実施も検討
― 平成24年度採用を中止