小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げから帰還まで、7年に渡る長旅をCGで描いたドキュメンタリー映画「はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH」。この完成披露試写会が5月10日、「ワーナー・マイカル・シネマズ みなとみらい」(神奈川県横浜市)にて開催され、上坂浩光監督が舞台挨拶を行った。

試写会が行われた「ワーナー・マイカル・シネマズ みなとみらい」

来場者との記念撮影に収まる上坂浩光監督(中央)

2010年6月に地球に帰還した「はやぶさ」は、再突入カプセルの一般公開に各地で行列ができるなど、国民の間に熱狂的なブームをもたらした。「はやぶさ」をテーマにした書籍が次々に出版され、ついには東映・松竹・20世紀FOXがそれぞれ映画化を発表(ちなみに東映版の主演はなんとあの渡辺謙!)。日本の宇宙開発にとって、これほどまでに支持されたプロジェクトは過去になく、米国におけるアポロの月面着陸に匹敵する出来事だったと言えるだろう。

昨年7月、相模原市立博物館にて公開されたカプセルには大勢の人が並んだ

この映画「はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH」(HBTTE)は、もともとプラネタリウム向けに作られた映像作品を、スクリーン向けにレンダリングし直したものだ。フルドーム用の映像を、そのまま平面のスクリーンに変換はできないため、コンピュータ上に仮想的にドームを作り、その中に置いたカメラで撮影するような編集作業を行った。ただ、シーンによってはどうしても画面に収まらなかったため、新たに描き直した場面もあったという。

プラネタリウム向けのHBTTEには初期バージョン(2009年バージョン)と帰還バージョンがあったが、もちろん劇場版には最新版である帰還バージョンの方が採用されている。同バージョンは、オーストラリアで「はやぶさ」の帰還を見届けた上坂監督がラストシーンを全面的に描き直したもので、内容について詳しくは過去記事を参照して欲しい。

再突入カプセルを分離したシーン。この後「はやぶさ」本体も…

HBTTEの上映時間は約46分。基本的にコンテンツの内容はプラネタリウム向けと同じだが、劇場版で注目したいのは映画館ならではの高品質なサウンド環境。映像については、平面スクリーンなのでどうしてもドームほどの臨場感は出ないものの、高解像度でシャープな映像が楽しめる。それぞれに良さがあるので、すでにプラネタリウムで見たという人も、改めて劇場に足を運んでもらえればと思う。実際、試写会に来た人たちも、半数以上はプラネタリウムで観賞済みだったようだ。

試写が終わり、上坂監督は「はやぶさは科学的な成果以外にも、大事なものを残してくれた。この作品を見て、それを感じてくれたら嬉しい」と挨拶。「最初にプラネタリウムで公開した当時、この作品がたくさんの人に受け入れてもらえるかどうか不安だった。作品は"作って終わり"ではなく、見てもらった人の心に届いて初めて完成するもの。あれから数年が経過して、多くの人から様々な感想を頂いた。そういう気持ちがたくさん集まった結果として、ここまで来ることができた」と振り返った。

こだわったシーンは、最後の再突入の場面だという。「再突入してバラバラになるシーンは、人間なら死に相当する場面。普通なら見たくないだろうが、あのカットを作ってみんなで見てあげることで、それがはやぶさのためになると思った」と監督。「長さはたった20秒くらいのシーンだが、何度も試行錯誤を繰り返して、これを作るためだけに1カ月かかった。はやぶさの裏にカメラが回り込んで、みなさんと一緒に地球に突入する視点はぜひやりたかった」と思い入れの強さを語った。

5月14日より、ワーナー・マイカル・シネマズ、角川シネプレックスにて全国ロードショー。上映期間は基本的に2週間の予定。好評の場合、映画館によっては1週間延長する可能性もあるそうだが、いずれにしても通常の映画に比べると短いので、見逃さないよう注意して欲しい。

ワーナー・マイカル・シネマズにはこんな説明パネルも出ていた

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