スウェーデンEricssonは通信機器分野の大手ベンダーだが、実は同社の事業を支える重要な柱の1つがサービスだ。モバイルネットワークを中心とした同社のグローバルサービス事業(Ericsson Global Service)の売上げは、この5年で2倍に、2003年と比べると3倍に成長しており、テレコムサービスではトップ。さらには、モバイルとITとの融合が進む中、Ericssonは、米IBMや米Hewlett-Packard(HP)などが上位を占めるITサービス分野においても、世界第8位の事業者にのし上がっている。
Ericssonが4月27日に発表した2011年第1四半期、グローバルサービス事業は174億スウェーデンクローナ(SEK)を売上げた。日本円に換算すると約2303億円となる。前年同期と比べると4%の減少だが、為替変動の影響を除外すると3%のプラス成長という。
グローバルサービス事業、成長の歴史
Ericsson グローバルサービス事業部副社長兼営業トップのJan Ogren氏 |
Ericssonのグローバルサービス事業部副社長兼営業トップのJan Ogren氏によると、Ericssonがグローバルサービス事業に力を入れ始めたのは10年以上前のことという。テレコム機器ベンダーの中ではいち早くサービスに目をつけた「草分け的存在」で、現在では主力事業のネットワーク事業を補完する存在となっている。
現在、Ericssonのグローバルサービスは、マネージドサービス、カスタマーサポート、コンサルティング、システムインテグレーションなどを含むプロフェッショナルサービス、ネットワークロールアウトサービスなどをそろえている。毎年、実装プロジェクトは約1200件、コンサル&システムインテグレーションは約1300件のプロジェクトを手がける。2010年は54件の契約を締結、この中にはChina Mobileなどの大手キャリアが含まれており、国にして29カ国。これらの成果もあって、事業部全体の売上げは801億SEK(約1兆583億円)に達した。このうち、プロフェッショナルサービスは585億SEK(約7729億円)、ネットワークロールアウトは216億SEK(約2853億円)。世界7億5000万人の加入者をEricssonがマネージしているという。
テレコムサービスのトレンド
Ericsson グローバルサービス事業部副社長兼コンサル&システムインテグレーショントップのPaolo Colella氏 |
テレコムサービス分野の最新の傾向について、グローバルサービス事業部副社長兼コンサル&システムインテグレーショントップのPaolo Colella氏は、音声の成熟とデータの成長を挙げる。データの成長が見込まれる背景には、モバイルインターネットの利用増とスマートフォンの台頭がある。端末側はタブレットなど種類が増えており、「オペレータにとっては大きなビジネスチャンスになりうる」とColella氏は見る。
もう1つのトレンドが、クラウドだ。Colella氏は例として、同社が先に手がけた欧州系オペレータのクラウドを利用したデータセンター統合プロジェクトを紹介する。ハードウェアとソフトウェアのコストの最適化や保守コストの削減を狙ったもので、サーバーでは、ライセンスや保守にかかる費用、電力コストなど、合計で60%のコスト削減を達成したという。同時に、新規サービスを迅速に導入できるタイムツーマーケット体制を強化した、とColella氏は報告する。
EricssonのITサービスの強み
Ericssonのグローバルサービスの強みとして、Colella氏は、4万5000人による世界規模での体制やブランド以外に、顧客と接する窓口、ニアショア、それにオフショアの3つのバランスをとることで実現するコスト効率を挙げた。ニアショアでは、先にルーマニアにグローバルサービスセンターを設置しており、オフショアではインドに重要な拠点を持つ。
もう1点興味深いのは、2010年に211億SEK(約2786億円)を売り上げたマネージドサービスのうち、「約半分はEricsson以外の機器を対象としたもの」という点だ。このようなマルチベンダー環境への対応も、大きな差別化となっているようだ。
今後は、米国や日本をはじめ世界的に機運が強まっているLTEのロールアウト、それにITが大きなフォーカス分野となりそうだ。なかでもEricssonにとって新しい分野となるITを強化するにあたり、同社は数年前から欧州や北米でITコンサル企業の買収を多数行っており、若いITエンジニアの雇用も積極的に行っているという。現在、4万5000人のグローバルサービス人員のうち、1万人がITプロとのことだ。
スマートフォンやタブレットによりITとモバイルが交差する中、サービス分野でもITとテレコムのそれぞれのベンダーを交えた覇権争いが始まっているようだ。