日立製作所は5月11日、2011年3月期連結決算を発表した。同期の売上高は前年同期比104%の9兆3,158億円、営業利益は前年同期比220%の4,445億円、純利益は前年同期に対して3,458億円改善の2,388億円となった。同社は今期、過去最高利益を更新した。
取締役執行役員副社長の三好崇司氏は、東日本大震災の影響について、「東北地方・茨城県を中心に多くの拠点が被災したが、3月末より操業を再開し4月中旬以降はほぼフル稼働体制に戻った。売上高、営業利益、営業外費用、当期純利益において影響が出ているが、エレクトロニクスや自動車分野の需要回復に伴い前期を上回った」と説明した。
震災の影響で、操業度低下による出荷減、顧客の検収遅延、棚卸し資産の滅失などが発生し、売上高は1,300億円の減少、営業利益と当期純利益はそれぞれ750億円の減益となっている。
同氏は、「今期は東日本大震災の直接的な影響は受けないが、顧客やサプライチェーンなどの間接的な要因の影響を第1四半期の売上は減少するだろう」という見方を示した。震災の影響を受けたHDD事業のサプライチェーンについては、他拠点での生産、設計変更、外部への転換など行うことで復旧を行っている。
セグメント別では、売上高は情報・通信システム、電力システム、社会・産業システム・金融サービス以外は前年同期を超え、営業利益は電力システムと社会・産業システム以外は前年を上回った。なかでも、建設機械、高機能材料、オートモーティブ・システムは好調だった。なお、震災の影響を除くと全セグメントで増益だったという。
同氏は、2011年3月期について、「前年度に比べるとリーマンショックからの回復したことに加えて、構造計画とカンパニー制度が不十分ながら効果が出始めている。また、東日本震災からの復旧スピードも上がっており、業績改善につなげていきたい」と述べた。
固定費としては目標を上回る約350億円の間接コストを削減し、また、資材調達費としては目標を上回る約2,300億円の資材費の削減を達成するとともに、グローバル調達と集約購買のいずれも目標を上回った。
同社は東日本大震災の復旧作業として東京電力の火力発電所の復旧に携わっているが、これまでに7機、電力量にして400万キロワットを復旧した。これから夏までには、6機(385万キロワット)の復旧を目指す。
同氏は、原子力発電について、「グローバルの視点で電力供給を考えると必要なものと思っている。現在でも、原子力発電を継続するとしている国もある。ただし、業績の面ではインパクトを受けるだろう。今後は当社の火力発電における強みを海外で生かしていきたい」とした。
2012年3月期の予想は、震災の影響から合理的な算定が困難だとして、公表が見送られた。