富士通は4月28日、2010年度通期の決算発表を行った。震災の影響などが大きく、売上高は4兆5284億円(前年比-1511億円)、当期純利益は550億円(同-379億円)となり、減収減益という結果となった。

富士通 代表取締役社長 山本正已氏

山本社長は決算発表会にて「東日本大震災前まではほぼ計画通りで進捗していたが、この震災によって特別損失を166億円計上することになるなど、結果として震災の影響をカバーできなかった」と説明。2011年度の業績見通しについても「現時点では不確定要素が多く、公表できる段階にない」としたほか、配当についても「現時点では未定」としている。

なお、1月の業績予想比ではすべての事業セグメント(「テクノロジーソリューション」「ユビキタスソリューション」「デバイスソリューション」など)がマイナスとなっており、売上高は-415億円、当期純利益は-199億円となる。

ただし、震災発生後の企業活動の停滞によるIT投資案件の先送りや中止が相次ぐなかでも「クラウド関連の需要が非常に大きく、データセンターの増床が追いつかない状況」(同社 取締役執行役員専務 CFO 加藤和彦氏)であり、明るい材料も見受けられるという。

富士通 取締役執行役員専務 CFO 加藤和彦氏

夏場の電力不足対策として実施される公算が高い電力総量規制への対策については、「当社としては、(実現できるとは言えないが)あくまで25%の総量規制が実施された場合を想定した準備を進めてきている」(山本社長)としており、その一環として、関東圏に1万台以上あるとされる社内用のサーバ環境の一部を、クラウド化(仮想化技術の導入)も踏まえつつ西日本に移すことを予定しているという。これによって同社は、東京電力管内おいて3~5%程度の節電効果を見込む。

また山本社長は、同社のデータセンターについて、「データセンターは当社の今後のビジネスの柱であり、顧客に対する電力供給は100%実現しなければならない」としてバックアップ電源(発電設備)の拡充などを進める意向を示した。

震災の影響に関しては、「自社では概ねBCP(事業継続計画)の効果が出ているものの、サプライチェーンまではこれが徹底されていたわけではなかった」(山本社長)とし、今後同社は部品調達網に対するリスク対策を見直すことになる見通し。

この震災の影響による部品供給の問題が解決され、生産工場が"フル稼働"状態となるのは「早くても6月になる見込み」(加藤氏)とのことであり、同社はこのような不確定要素が解決された段階で、あらためて2011年度の業績見通しや中期経営計画を公表する予定。