三菱マテリアルと電気化学工業は4月26日、三菱マテリアルが技術確立した カーボンナノファイバー(CNF)を含むリチウムイオン2次電池用導電材料などの研究開発および販売について、共同で事業化の検討を進めていくことを決定したことを発表した。

三菱マテリアルはCOガスを主原料としたCNF合成に関する技術開発に成功し、市場性などの検討を行っていた。同CNFは、従来の炭化水素系CNFに比べてタールなどの不純物が少なく、低温での合成が可能であるといった特長があり、従来品に比べ品質面およびコスト面での優位性がある。

一方、電気化学はカーバイド生産時に副生するCOガスを含み安価に安定供給できる電炉ガスを有しているほか、その利用方法について多くの知見を有していることから、両社で量産化に向けコスト競争力のある同CNF製造について検討を進めることを決定したという。

なお、当面はパイロットプラントを利用した市場開拓を行なっていく方針で、今後の計画としては、電気化学の青海工場に同CNFのパイロットプラントを設置し、両社は2次加工品や複合化製品に関する研究および2次電池やキャパシタを中心とする市場開拓に加え、導電性製品としての適用分野を拡大していく予定としている。

また、併せて電気化学は、リチウムイオン2次電池の正極活物質の1つであるリン酸鉄リチウム(LFP)の導電性不足を克服し、電池特性を向上できる正極材料を、リチウムイオン電池の各種構成材料を研究開発している エス・イー・アイと共同で開発したことも発表している。

電気化学はリチウムイオン2次電池分野に向けて、アセチレンブラックを電極材料用高純度導電助剤として販売していたが、今回、LFPとリチウム2次電池用に改良を重ねてきたアセチレンブラックおよびCNFを特殊複合化することで、LFPの導電性を向上させる技術(=低抵抗化技術)とともに、課題であった塗工液製作時の分散性も向上させる技術を開発した。

なお、同技術で使用されるCNFは、三菱マテリアルのCOガスを原料とするCNF合成基本技術と同社の保有する電炉ガスを原料とする応用技術の結合から生まれたもの。

同技術から得られる正極複合材料(LFPカーボン系複合材料)を使用したリチウムイオン2次電池は、その低抵抗性から優れた放電レート特性を有するとともに、高速充放電条件下でのサイクル試験で数千回のサイクルに耐えられる長寿命を実現するなど、LFPを使用した従来品に比べ、各電池特性が大きく向上することから、LFP使用による電池の世界標準化に欠かせない技術となるものと同社では説明している。