ゲームを中心としたソーシャルアプリ(以下、ソーシャルアプリと表記)向けのインフラ提供サービスはVPSをベースとしたものが中心となっているが、at+linkは「パブリッククラウドと専用サーバサービスの"いいとこ取り"」をコンセプトとして開発されたというソーシャルアプリ特化型専用サーバパッケージ「at+link アプリプラットフォーム」を提供している。ここでは同社のディベロッパーサポート マネージャー 文屋宏氏とシニアエンジニア 前佛雅人氏に、このサービスの特徴を聞いた。
高性能と信頼性に強み「at+link アプリプラットフォーム」
パブリッククラウド、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)型のホスティングサービス(VPS)は、初期費用がかからないことによる導入のしやすさやスケールアウトの容易さといったメリットがあるが、at+linkの文屋氏によれば「パフォーマンスの悪さや従量課金では予算組みが難しいといった問題を踏まえ、専用サーバサービスに乗り換えるユーザーも少なくない」という。
パフォーマンスや信頼性の高さという点でまだまだ高い需要がある専用サーバサービスだが、一方でイニシャルコストや迅速な増設が難しいといった側面があることがデメリットとして指摘されることが多い。しかし、同社の「at+link アプリプラットフォーム」は、スピードが要求されるソーシャルアプリに特化すべく、このような専用サーバのデメリットを解決しながらパフォーマンスと信頼性を徹底的に追求した。
Fusion-io社の超高速SSDでDBのボトルネックを解消
文屋氏が「他社と圧倒的に異なる部分」として力強くアピールしているのが、データベースサーバのストレージとしてFusion-io社の超高速SSD「ioDrive」を選択できる点だという。
ioDriveの最大読み込み速度は、770MB/秒、最大書き込み速度は750MB/秒。これはFusion-io社が公開しているスペックではあるが、一般的なSATA接続のハードディスクに比べ10倍以上もの処理能力を持つため、これによってディスクI/Oのボトルネックを解消することが可能だ。「応答速度はソーシャルアプリにとって命。"遅い"と思われた瞬間に新規ユーザーの獲得機会を失う」(文屋氏)とのことだが、これを裏付けるように、「契約プランはioDrive搭載タイプが多い」(文屋氏)そうだ。
通常、データベースの処理を分散させるには複数台のサーバを用意して高度な運用管理を行わなければならないが、超高速なioDriveを利用すれば、データベースサーバを1台に集約させることができる。つまり、パフォーマンスだけではなく、運用管理負荷の軽減といったメリットも生まれる。
分散KVSによるキャッシュサーバの柔軟な運用を実現
また、ioDriveと並んで大きな特徴とされるのが、キーバリューストア(KVS)によるキャッシュサーバが提供されることである。
大量のアクセスを同時に処理しなければならないソーシャルアプリの運用にキャッシュサーバは必須であるが、自前で構築するにはコストや手間がかかる。アプリの企画・開発に注力したい事業者としては、"本業"ではないこのような部分にリソースを割きたくないというのが本音ではないかと思うのだが、KVSによる冗長化の仕組みのもとで構築されている同社のキャッシュサーバは、耐障害性やメンテナンスフリー、容易なメモリの追加を実現する(1GBまでは無料)。
もちろん、このキャッシュサーバにはmemcachedプロトコルでの接続が可能となっているため、キャッシュサーバの運用経験があれば、その経験をそのまま生かすことが可能だ。
なお、同社が提供するキャッシュサーバは、"裏側"で冗長化されている(複数台のキャッシュサーバが稼働している)とはいえ、ユーザー側から見えるキャッシュサーバは1つ。つまり、手作業でキャッシュサーバにメモリの割当を行うといった必要もないため、運用管理もラクである。
ちなみにこのKVSによるキャッシュサーバ機能は、オープンソースの「okuyama」を利用して神戸デジタル・ラボと同社が共同で開発している。
"信頼"を支える運用サポート体制もポイント
VPSが抱える問題点として、トラブル発生時の原因の切り分けが難しいということがある。例えばVPSで「遅い」といった状況に陥った際に、果たしてそれが「OSの問題なのか?」「アプリケーションの問題なのか?」「仮想化システムそのものの問題なのか?」……原因の特定を行うことは容易ではない。
至極シンプルなことではあるが、専用サーバサービスでは原因の切り分けが容易であり、前佛氏によれば「そのような理由で専用サーバにこだわるユーザーも多い」という。
また前佛氏は今回のインタビューにおいて「サポート体制には絶対の自信を持っています」と言い切っている。同社は専任の担当者による導入・運用コンサルティングサービスを随時無償で提供しているが、「ユーザーが困っていることを解決する、ユーザーの役に立つことを常に提供する」という点を念頭に、"守り"ではなく積極的なサポートサービスを展開している。このような同社の姿勢はユーザーからの評価も高く、これが新規・継続案件の獲得に寄与するケースも少なくないそうだ。