組み込みソフトウェア分野の若手人材育成を目的に毎年行われているETソフトウェアデザインロボットコンテスト、通称「ETロボコン」。今年で10回目を迎える同コンテスト「ETロボコン 2011」の参加申し込みの締め切り期日である4月30日17時が一週間後へと迫ってきた。当初の締め切りは4月6日17時を予定していたが、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響を考慮し、およそ3週間ほど延期した形となっている。本稿では募集締め切りを目前にした今の状況を改めてお伝えしたい。まだ、応募を検討しつつも、今一歩、参加を決断しきれていないチームは、各地区の状況整理などに役立てていただければと思う。
ETロボコン 2011は、日本全国を北海道、東北、北関東、東京、南関東、東海、北陸、関西、中四国、九州、沖縄の11地区に分けて実施される大会で、それぞれの地区の上位チームが2011年11月に実施される組み込み技術の展示会「Embedded Technology(ET)」と併催の形で開催されるチャンピオンシップ大会への出場権を得ることができる。2011年4月22日0時時点の各地域の参加登録数を見ると、以下の図のようになっている。
すでに東海地区は定員に達しており、キャンセル待ちの状況となる盛況ぶり。これは、これまでの開催地であった浜松(静岡県)から、今回は開催地を名古屋(愛知県)に変更したことが功を奏したようで、愛知県からの登録者が増加したという。
一方。北関東は定数20に対し10にとどまっているが、こちらも今年初めて会場を埼玉にしたことが影響しているようだ。参加チームの地域を確認したところ、新潟からの参加が減少傾向にあるという。
また、今回からは関西から中四国地区が独立。その結果、関西は定数50に対し、4月22日0時時点の登録チーム数は26となっており、前回の参加チーム数が42であることを考えると、このまま行けば、参加チームはどこも上位を狙いやすい地域となる可能性が出てくる。
なお、昨年、中四国地区に該当し関西に参加したチームは7チームであることを考えると、逆に中国地方や四国地方の企業、大学の参加率が倍以上に高まっていることとなり、中四国で勝ち残ることは狭き門になる可能性もある。
関西は中四国と分かれたことで、参加チーム数は減っているという事情があるので分かりやすいが、東京と九州地区が前年比で11チーム参加数が減っている。まだ、締め切りまでに1週間程度あるため、このままの数で、ということはないだろうが、東京はそうは言っても約70チームの参加表明があることを考えれば、恐らく今年も熾烈な戦いになることが予想される。一方、九州は定数60に対し、35チームと言う按配を考えると、こちらも関西地区と同様に、このまま行けば、参加チームはどこも上位を狙いやすい地域となる可能性が出てくる。
そうした意味では、関西、九州という2地域が穴場となる可能性があるわけで、後1週間でまだ同地域で参加表明をしていない実力のあるチームなどが、参戦を表明することもあるかもしれない。
なお、ETロボコン実行委員会本部・運営に対し、今回の震災を踏まえた形での意気込みを聞いたところ、「ETロボコンは教育ロボコンであり、災害を乗り越え将来に貢献できるエンジニアが育つような機会を提供していきたい。東北地区に関しては『こういう時こそ未来にむけて人材育成を』と、開催を決定しました。東日本への応援も込めて、西日本のみなさんがんばりましょう。熱き参加で盛り上げを期待しています」とのコメントをいただいた。
実際、東北地区は非常に大規模な被害を受けていながらも、前年の参加チーム数34とほぼ同数の30チームが4月22日0時までに参加表明をしており、「がんばろう! 東北」の合言葉の下、ETロボコン 2010で、それまで上位常連であった東海や九州を抑え、南関東地区がチャンピオンシップ大会で1~3位独占を成し遂げたように、一気に大躍進を遂げる可能性もある。
いずれにせよ、実際に走らせてみないと分からないのが勝負の世界ではあるのだが、勝ちたいという想いとそのモチベーションを維持するだけの何かしらの力は必要となるだろう。今年も組み込みエンジニア達の静かながら熱い想いが込められた戦いがもうすぐやってくる。