Mentor Graphicsは、SPICEシミュレータながら大規模回路を高速かつ高精度に処理することが可能な製品「Eldo Premier」を発表した。

同ツールは、アナログ/ミクスドシグナル製品やCMOSイメージセンサなどでの活用を想定しており、SPICEの精度の品質を維持しながら、従来のSPICE比で20倍の性能と10倍の容量を実現することが可能となっている。

従来、大規模回路ではFast SPICEシミュレーションが用いられており、同社でもアナログおよびミクスドシグナル・アプリケーション向けに「ADiT」というツールの提供を行っていたが、今回、独自に開発した解法を採用することで、プリレイアウトならびにポストレイアウトのいずれにおいても大規模回路シミュレーション時間の短縮を実現したという。

具体的には、3つのテクニックが用いられているという。1つ目はSPICEのコアカーネルであるマトリックスソルバの刷新。2つ目は代数ソルバの刷新、そして3つ目は内部的に階層的な処理を取り入れることによる負荷の軽減としており、こうした技術を用いて処理の高速化を実現した結果、同社では同ツールを従来のSPICEの精度を維持しつつSPICEでもFast SPICEでもない「Faster SPICE」に分類されると説明している。

Mentor GraphicsにおけるEldo Premierのポジショニング。より大規模な回路全体といった検証はADiTの利用が推奨されており、Eldo Classicとの間を埋めるツールという位置づけになっている

この結果、旧来のSPICEシミュレータ「Eldo Classic」に比べて処理速度は2.5倍~20倍程度としており、検証規模が大きければ、処理速度の向上比率は上昇していくこととなる。

すでに一部のカスタマにおいてβ版のテストが実施されているが、回路規模や扱う回路の種類により差があるが、最低でもEldo Classicで7時間6分かかっていたものが、3時間15分程度へと2.1倍短縮され、最大では30時間かかっていたものが2時間へと15倍の短縮がなされたという。

Eldo ClassicとEldo Premierの処理性能比較。774×800ピクセルのTFTパネル(600万トランジスタ素子)の処理をさせた場合、Eldo Classicでは規模が大きすぎて処理ができなかったが、Eldo Premierでは2時間45分で処理を終えた

なお、Eldo PremierはEldo Classicと同じ利用モデルを採用しており、Eldo ClassicのユーザはEldo Classicのコマンドを使用して信号のプロットやプローブが可能なほか、Eldo Premierからは通常の出力ファイルやEldo Classic用に記述されたポストプロセス用スクリプトが生成され、これらはそのまま修正することなく再利用することが可能となっている。

Eldo Premierはすでに出荷を開始しており、今後はQuesta ADMSのサポートを予定しているとのことで、VHDL/VerilogやVHDL-AMS/Verilog-AMS記述を含むミクスドシグナル検証が可能となる予定としている。