IDC Japanは、東日本大震災による国内IT関連事業所への影響における復旧見通しと、2011年の生産インパクトを調査し、分析結果を発表した。
調査は、IT製品に使用される48の素材について、50のメーカーの68事業所に対して行い、その中の生産高インパクトの大きい19事業所について公開した。調査方法は、直接訪問と電話での聞き取り調査によって行い、それができないものについては、プレスリリースをベースにしたという。
IDC japan PC、携帯電話&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 木村融人氏によれば、被災には、工場自体が被災した場合と、部材が調達できない場合があるが、両方の影響を受けると復旧期間が長くなる傾向があるという。また、生産工程が長い場合や部品点数が多い場合も、同様に復旧期間が長くなるという。
半導体に関しては、4月初旬に比べると日を追うごとに復旧が進み、当初は3カ月程度かかるのではいわれていた復旧見込みも、11~14週くらいで部分復旧するところまできているという。個別では、SUMCOの場合、山形工場は被災しているが、九州に代替工場があり、今年の後半には回復する見込みで、年間の生産高ではプラス2%と予測している。東芝セミコンダクターは、半導体ウェハーの回復によって、現在はマイナス5%と予想している生産高インパクトも、マイナス2~3%に収まる可能性もあるという。
メモリに関しては、今後のスマートフォンなどの需要増を見越して、例年よりも多めにストックを持っていたことから、影響が予想よりも少なかったという。
木村氏は、ディスプレイは液晶や関連の部材メーカーが被災しているケースが多く、モジュールの部品点数も多いことから、最も危惧している分野だが、代替が利く部材が多いため、数カ月程度は影響はあるが、年間の生産高インパクトとしては、マイナス2%と低めの影響に留まる見込みだとした。
水晶、バッテリ、受動部品については、きちんとリカバリーができているので、年間を通してのインパクトはマイナス1~2%程度の影響で済むという。
比較的影響が大きいのは、日立化成工業のDCブラシで、これは鉄道系の直流モーターに利用されており、世界シェアは50%にのぼるという。ただし、鉄道会社では6カ分の保守用部材をストックとして持っているので、この間に生産拠点を他へ移すことにより、影響をある程度抑えられ、予想のマイナス10%までいかない可能性もあるという。
三菱ガス化学が生産している過酸化水素は、半導体のウェハーの洗浄や紙の漂白に利用しており、三菱ガス化学の国内シェアは60%と高いが、シェアの40%の部分については、他社の増産によりリカバーできるという。三菱ガス化学がある鹿島コンビナートは、復旧が進んでおり、5月下旬になれば、もう少し詳細な回復状況が判明するという。
自動車メーカー向けの組み込み半導体を生産しているルネサスエレクトロニクスは、世界シェアも75%と高く、各報道でも影響が大きいといわれているが、とくに茨城県の那珂工場の影響が大きいという。ただ、ルネサスエレクトロニクスでは、携帯電話については一部を台湾のTSMCに製造委託し、自動社向けの一部をシンガポールで生産するなどして、那珂工場の50%はリカバーできる見込みで、残りの50%については、製品型番ごとに他社での生産が可能かどうか検討作業を行っているほか、自動車では、カーナビなど基本性能に影響を与えないものは、後付けにするという対応を行い、影響を抑える努力が続けられているという。
オフセット用のインク溶剤については、新聞等の印刷に影響を与えているが、リサイクルの拡大、代替品の増産、海外からの輸入によって対策を講じているという。
IDC Japanリサーチバイスプレジデント 中村智明氏は、今回予想した数字は、計画停電などの大規模な停電が起きない、福島の原発が安定することが前提なので、夏の電力が安定的に供給されることが重要だとした。そして中村氏は、政府は節電によって計画停電を避けようとしているが、大口顧客はある程度コントロールできるが、家庭については予測てきない部分が多いため、家庭での削減分を東京電力が供給量を増やすことによってカバーできるかが今後ポイントになるとした。