Broadcomの日本法人であるブロードコム ジャパンは4月12日、都内で会見を開き、携帯機器やスマートフォンなどのLTE/4Gなどのモバイル・バックホールの帯域幅の拡大を可能とするスイッチング製品「StrataXGS BCM56440」シリーズを発表した。すでにサンプル出荷を開始しており、サンプル価格は1万個受注時でハイエンド品で200ドル程度としている。2011年第4四半期中の量産出荷を予定している。
BroadcomのDirector,Product Management Infrastructure And Networking GroupであるEdward Doe氏 |
BroadcomのDirector,Product Management Infrastructure And Networking GroupであるEdward Doe氏は、今後1~2年の間にスマートフォンがPCの出荷台数を追い越すことを指摘、ワイヤレス通信のトラフィック量も2010年では0.24EBであったものが、2015年には6.3EBへと増大し、インターネットにおけるどのインパクトよりもモバイルインターネットの利用者の増大速度は早いとするものの、その一方で、トラフィック量の増大によるモバイルのバックホールに起因する障害などが発生しているとする。
モバイル端末の通信環境は3GからLTE、そして4Gへと移行が進んでいるが、「端末側のCell Site、そしてAggregation Network、Mobile Infrastructure&Coreの部分は帯域幅の拡大が進んでいるが、結果としてMobile Backhaul部の帯域があまり拡大せずボトルネックとなる。この分野は2014年には帯域の拡大に向けた設備の入れ替えなどで80億ドルの市場になると予測されている」(同)としており、同製品シリーズは、そうした市場のニーズを取り入れたものとして開発されたという。
同製品シリーズは大きく4つのポイントがあるという。1つ目は40nmプロセスを用いて、従来ソリューションでは7つのチップを用いていた機能を1チップに集約したということ。これにより、従来ソリューション比でBOMコストおよび機器としての設備投資コストの削減が可能となり、モバイル・バックホール装置への設備投資コストを最大50%削減することが可能となるほか、電力消費も抑制することが可能になる。
2つ目はキャリアネットワークからの高度なパケット処理機能。「Broadcomが提供するイーサネットスイッチ製品は単なるL2やL3の処理だけではなく、さまざまな機能を搭載してきた。同製品シリーズも、BFDやMPLS-TPなどの機能を搭載している」とするほか、「そうした多くの機能を実現しつつ、帯域の低下を抑えており、4Gで必要になる最低限の帯域を確保することが可能だ」とする。
3つ目は、この帯域幅の増大への対応で、独自のXGSラインアーキテクチャを採用することで、従来のTDM方式に比べて1000倍となる1Gbpsの帯域幅を実現することが可能だとしている。
FPGAなどを用いた場合でも、同程度の性能を達成することが可能と見込めるが、それについて同氏は、「確かに機能は同程度が見込めるが、1チップに同製品と同等の機能をすべて入れようと思うとすれば、規模の大きなチップを用いなければならず、恐らく1000ドルは必要となるだろう。そうなれば、システムのコストにもそれは跳ね返ってくるし、機能を増やせば、それだけ処理性能が犠牲になる可能性もある」とし、同製品シリーズの優位性を強調する。
そして4つ目は、既存ネットワークから次世代ネットワークへのシームレスな移行で、同社が2011年4月5日に発表したマイクロ波バックホールシステム用のミクスドシグナル半導体ベンダProvigentの買収によるマイクロ波技術と光ファイバを組み合わせることで、例え光ファイバが切断されるような事態に陥ったとしても、通信を維持することが可能となっている。
なお、同氏は日本はNTTドコモがLTEサービス「Xi」を開始するなど、ワールドワイドで見ても先端の地域の1つとしており、ネットワークの移行時期などはキャリアの思惑次第という部分もあるが、積極的に移行に向けた提案を進めていくとした。