帝国データバンクは4月8日、東日本大震災が日本経済全体に深刻な影響を及ぼしているとして、1995年1月に発生した阪神大震災後の倒産状況について分析・検証を行ったうえで、当時の状況との比較を通じて考察した今回の震災後の企業倒産見通しを発表した。

阪神大震災後の倒産状況について、最も被害の大きかった兵庫県と全国の件数を比較すると、「全国」は「95年増、96年減」に対し、「兵庫県」は「95年減、96年増」と、対照的な結果が明らかになった。

阪神大震災関連倒産の推移 資料:帝国データバンク

この要因について、同社では「手形の不渡り報告記載猶予のほか、災害復旧貸付制度や返済猶予など、さまざまな緊急支援策により、懸念された兵庫県内の倒産多発が回避された」と指摘している。

しかし、その効果は一時的なものに終わり、震災による直接、間接の影響を受けて倒産した「阪神大震災関連倒産」は、95年2月~97年12月の約3年間で394 件判明した。その後も、2年間2ケタの発生が続くなど、影響は長期に及んだ。

95年に発生した関連倒産194件のうち、業種別では「履物」(43件、22.2%)、「繊維」(28件、14.4%)など兵庫県の地場産業が目立つ。倒産パターン別では、「直接的被災」が104件(構成比53.%)で過半数を占めた。「間接的被災」も90件あり、得意先被災による「売掛金回収難」が35件、仕入先被災による「仕入ストップ」が34件となった。

一方、主な東日本大震災関連倒産としては17件が判明している。百貨店経営の中三(負債122億5000万円、青森市)は、消費低迷による売上減少が続くなか、3月14日に盛岡店で爆発事故が発生した。震災の影響もあり3月単月の売上が大きく落ち込み、月末の現金支払いに窮し、3 月30 日に民事再生法を申請した。業務用食器・厨房機器販売のホクト(負債12億2,000万円、石川県能美郡)は、厳しい業況が続くなか、震災の発生で大口得意先を含め顧客が被災した。4月以降の受注がほとんど見込めない状況となり、3 月30日までに自己破産申請の準備に入った。

政府は阪神大震災の時と同様に、「政府系金融機関による災害復旧貸付」、「信用保証協会による災害関係保証」、「100%保証の半年間延長」、「不渡報告への記載猶予」、「破産手続き開始決定の2年間留保」など、企業向け緊急支援策を打ち出してはいる。しかし、同社は「今回の検証結果からも明らかなように、各種支援策は一時的な延命措置にはなるものの、効果が長続きするものではない」とコメントしている。

また、現時点では震災の余波がどこまで広がるか未知数な部分も多いが、「自動車やテレビ等の基幹部品の調達難による生産停滞の長期化」、「国内初の計画停電がもたらす日本経済全体への影響」、「全国的な消費自粛による流通、サービス業の業績悪化」、「原発の風評被害を受ける農水産業への影響」などを考慮すれば、東日本大震災が企業倒産に与える影響は阪神大震災以上となる可能性が高いと、同社では見ている。