矢野経済研究所は4月4日、東日本大震災後の被災エリアの復興プロセスと主要産業への影響に関する調査結果を発表した。これによると、被災5県の主要産業のうち、卸・小売業は前年度比86%と最も大きな影響が出て、回復までの期間も長期化するという。

調査対象の産業は、建設業界、住宅業界、建材業界、建機・レンタル業界、自動車業界、電機・精密・電子部品業界、化学業界、食品業界、小売・外食・レジャー業界、運輸業界、エネルギー業界、医療業。

震災が各産業に与えるインパクトが阪神淡路大震災と同様だと仮定すると、復興初年度の建設部門は2010年度に比べて167%、金額ベースで同1兆3370億円増が見込まれると、同社では見ている。復興初年度から4年間における被災5県の建設部門の県内総生産の総額は、少なくとも12兆2000億円を超える。

これらは福島第1原発の影響は考慮されていないが、被災県の社会、経済、地理的条件や人口構造、「震災+津波」という特殊な被災形態を鑑みると、東日本大震災の被害は阪神淡路大震災に比べ広域、甚大かつ長期に及ぶと推察されるという。

建設部門を中心に大きな復興関連需要が見込まれるが、原発問題の長期化も相まって消費 マインドの低下、電力供給不足、エネルギーコストの高騰、海外における日本製品に対する過剰反応など、生産、流通、消費、サービスなど広範な産業分野に深く、長期的な影響を及ぼすとしている。

なかでも、電子材料や自動車関連部材といった先端分野では、グローバル・サプライ・チェーンに対する影響も大きく、素材・部材分野における競争環境が世界レベルで変化する可能性もある。

一方、全産業において次世代に向けての変化が加速、スマートグリッド構想や次世代都市ビジョンの創造、新エネルギー・環境関連技術の開発促進、製造業における高付加価値品シフトの加速、グローバル戦略の再構築による国際競争力の強化など、産業の新陳代謝や社会・経済構造の革新が急速に進む可能性も高いと、同社では分析している。