昨年より、ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)・プラットフォーム「Avaya Aura」、Avaya Aura上で稼働するアプリケーションを統合するユーザー・インタフェース「Avaya Flare Experience」、ビジネスアプリケーションにリアルタイムコミュニケーション機能を容易に統合するミドルウェア「Avaya ACE」と、UC関連の新商品を次々と発表してきた日本アバイア。
今日、ソーシャルメディアの台頭やモバイルデバイスの普及によって、企業におけるコミュニケーションが変わりつつあり、コミュニケーションのあり方を問う企業が増えてきている。そうしたなか、UC市場ではどのようなことが起こっているのだろうか?
今回、同社の代表取締役社長であるロバート・スチーブンソン氏に、UC市場の最新動向や同市場に対する同社の取り組みについて話を聞いた。
やっと来た、古くて新しい技術「SIP」の転換期
初めに、同氏は「一般に、通信業界の技術は登場してから普及するまで、10年間かかると言われています。それはSIPも同じで、UC市場の競合であるマイクロソフトやシスコシステムズも含め、昨年からUC市場はようやく盛り上がりを見せるようになりました」と説明した。
こうしたSIPの成熟に加え、iPhoneやiPadの登場が「UC市場にとって大きな起爆剤となった」と、同氏は指摘する。「すぐれたインタフェースによってスマートフォン市場の裾野を広げたiPhone、iPadの功績は大きいです。今や、iPhoneは企業でも導入が進んでいます。それによって、音声をビジネスに取り入れようという機運が高まっており、音声とデータを統合できるSIPベースのUCの必要性が増してきています」
さらに、ソーシャルメディアの存在も見逃せない。コールセンターでも、電話やWebベースのフォームに加えて、ソーシャルメディアの活用が始まっている。また、ソーシャルメディアに流れるデータから新製品を開発する際のヒントやユーザーの声を拾いたいといったニーズも出てきており、そのために今後はデータマイニング・システムとコールセンターを連携させるといったことが行われていくという。
真のUCを実現する製品群を開発
こうした新たなUCの実現に向けて、同社は昨年から今年にかけて新製品を相次いでリリースした。2009年3月には、SIPベースのUCプラットフォームとして、Avaya Auraが発表された。Avaya Auraは同社の技術と2007年に買収したUbiquity Softwareのソフトウェア・プラットフォームを統合することによって強化された。Avaya Auraについて、「餅は餅屋」と自信を見せる同氏、「Avaya Auraの実現には5年から6年かけています。Avaya Auraは、SIPにこだわってきたわれわれの集大成なのです」と話す。
しかし、どんなにすぐれたプラットフォームを作っても、「その上で何ができるのかを示すことができなければ意味がない」と、同氏は訴える。そこで、同社は昨年9月にAvaya Auraで稼働するコラボレーション・ソリューションの新製品群「Avaya Video Collaboration Solutions」、直感的な操作でビデオ、音声、インスタントメッセージング、メール、SNSといった各種コミュニケーションツールを統合的に利用できるインタフェース「Avaya Flare Experience」を発表した。
同氏は「Avaya Flareによって、UCのエンドポイントにおけるポテンシャルを体現しました。これは業界としての挑戦だったと言えます」と説明する。
そして、同氏はやっとさまざまなコミュニケーションが統合された真の意味での「ユニファイドコミュニケーション」が実現したという。「これまでUCと名が付く製品はありましたが、コミュニケーション機能がビジネスアプリケーション連携されていませんでした。実際にUC製品を導入したけれど、使い勝手がよくなくて『壁だらけだった』というお客様の声も聞いています」
今年3月には、ビジネスアプリケーションとUCアプリケーションの連携を容易にするためのミドルウェアとして、Avaya ACEがリリースされた。
同氏はAvaya ACEについて、「これまでCITと関係がなかったJavaエンジニアや.NETエンジニアがビジネスアプリケーションにSIPベースのコミュニケーションを取り込むことを可能にする。ブラックボックスになっていた音声データを簡単に扱えるようになる」と説明する。
こうした仕組みの重要性は「iPhoneとアプリの関係を見ればすぐにわかる」と同氏はいう。ご存じのように、iPhoneアプリは30万を超えているが、その理由の1つはアプリの構築が容易な環境にあるからだ。アプリが作りやすいからアプリが増え、アプリが多いからユーザーも増えていく――iPhoneにはそんな正のスパイラルが築かれている。
つまり、同社としては、iPhoneと同様の世界をUC市場においても構築したいというわけだ。
国内での目標は「開発者のエコシステムの構築」
同氏は、日本アバイアの抱負の1つとして、こうした開発者のエコシステムの構築を挙げる。「エコシステムはビジネスを拡大するうえで重要です。当社は以前PBXを主に販売していましたが、2年前にハードウェアとソフトウェアを分離しました。そして、製品のバージョンアップはソフトウェアのバージョンアップによって行うように変更しました。これからはソフトウェアにおいてドライブをかけていきます」
エコシステムを構築していくため、Avaya ACEを中心に開発者のコミュニティ作りにも力を入れていくという。
加えて、日本市場における注力テーマとして、「サービスの強化」がある。グローバルで見た場合、他の国々と比べると、日本ではサービスの売上が2倍から3倍あるそうだ。サービスの中でも、「販売する前のサポートに重点を置いている」と同氏は語る。UCシステムは使いこなせるようになることが大事であり、そのために同社が長年蓄積してきたノウハウを共有していきたいという。
さらに、新製品が出揃った今年はそれらを使いこなし、「日本ならではのソリューションを開発していきたい」と、同氏は力強く話す。
最近のIT業界では、「スマートフォン」や「ソーシャルメディア」に続き、データ分析も注目を集め始めている。そうしたなか、当然UCも大きな役目を果たすことになる。第2ステージに進んだUC市場が今年はどのように変化を遂げるのか、興味深い。