宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月17日、岩手県からの要請を受けた文部科学省の依頼に基づき、東北地方太平洋沖地震により通信設備に大きな被害を受けた岩手県に対し、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)用の可搬型地上アンテナ2式、テレビ電話会議システム2式、無線LAN4式などとともに、通信設備の設置・運用のための要員5名を岩手県に派遣したことを発表した。
岩手県災害対策本部では、固定電話や携帯電話等の通信設備が全て使えなくなった被災地(釜石市)と県庁対策本部の間の通信に「きずな」を利用する予定で、同システムが設置されれば、岩手県庁と釜石市の現地対策本部間のハイビジョンTV会議による情報共有やIP電話による情報共有、安否情報発信などが可能になるという。
2008年2月23日17時55分、H-IIAロケット14号機によって打ち上げられた「きずな」は、政府IT戦略本部の「e-Japan重点計画」に基づいて研究開発が行われているもので、現在、JAXAと情報通信研究機構(NICT)との共同で開発が進められ、世界最高水準の高度情報ネットワークの形成が進められている。
具体的には将来の情報ネットワークのさらなる高速・大容量化を想定し、一般家庭でも超小型アンテナ(CS受信アンテナとほぼ同じ直径45cm程度)を設置することで、最大155Mbpsの受信および6Mbpsの送信を、また企業などにおいては直径5m級のアンテナを設置することで最大1.2Gbpsの超高速双方向通信の達成を目的としている。
さらに、国内インターネット網の高速化にあわせた国際的なインターネットアクセスの高速化、特に日本と周辺のアジア・太平洋地域の諸国との高速通信の実現も目的としており、インターネット、教育、医療、災害対策、ITS(高度道路交通システム)などの各分野における衛星利用を推進する宇宙インフラ構想「i-Space」の中で、大容量データ通信分野の技術実証を担う衛星となっている。