ユビテックは、東京大学のアタカマ天文台(TAO)プロジェクトにおいて、2011年2月22日にチリ共和国チャナントール山頂(標高5,640m)に設置された山頂観測施設と山麓のサンペドロ・デ・アタカマ(標高2,430m)に設置された山麓基地との間、約48kmを結ぶ2.4GHz長距離無線アクセス回線を構築し、無線通信に成功したことを発表した。

TAOプロジェクトは、東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センターが主体となり、チリ北部のアンデス山脈にあるチャナントール山頂に世界最高水準となる口径6.5mの赤外線望遠鏡を建設し、銀河や惑星の起源を解明するための観測を行うもの。

同施設は常設の天文台としては世界で最も標高が高い位置にあり、山頂には2009年に口径1mのminiTAO望遠鏡が設置され、銀河中心部の水素が出す赤外線を地上から観測することに成功している。

今回構築した無線アクセス回線は、同社がこれまで構築してきた無線LAN、WiMAX基地局など屋外無線ソリューション提供のノウハウを活かし、地形に合わせた回線設計を行い、チリ共和国の電波法令に従った許可申請を行なって、設計・構築したもので、電波伝搬状態の悪化や機器故障により1対向が切断した場合も、観測に必要な作業が中断することのないように自動的にもう1対向でバックアップする信頼度の高いシステムとなっている。

今回構築したシステムの概要

無線装置は長距離無線LAN構築で実績のある日本無線の2.4GHz無線LAN装置を使用し、過酷な自然環境を考慮して屋外で低温時にも動作する構造を採用した。

同回線により、従来はオペレータが片道2時間半をかけて山頂にある天文台に出向き、酸素ボンベを装着しながら行なっていた観測作業が、山麓基地より遠隔制御でより安全に行なえるようになる。

左が山麗基地、右がTAOサイト(山頂観測施設)

なお、同社では有線と無線を融合させ、あらゆる場所でコミュニケーションを可能にするIPネットワーク構築ソリューションを提供していくとしている。