NECは、シリコンフォトニクス技術を利用して、シリコンチップ上の多数の光素子で構成した小型集積光スイッチを開発した。同成果は、3月6日から11日にかけて米ロサンゼルスで開催されている学会「Optical Fiber Communication Conference(OFC)」にてシンガポールのIME(Institute of Microelectronics)との共同研究として3月8日に発表した。
今回開発された光スイッチは、LSI製造向け標準CMOSプロセスを活用して形成したシリコン光導波路をベースに、局所的な加熱により屈折率を変化させて光路を切り替えるスイッチ素子64個と、多重化した光信号を波長ごとに分離・合流する光合分波素子を作成し、12mm×3mmのシリコンチップ上に集積したもの。
加熱部長さを100μmとし、印加電力約35mW、切替時間約15μsで動作する光路切替素子を集積化し、従来の石英光導波路に比べチップ面積を約1/100、電力を約1/10とする小型・低電力の光スイッチを実現したほか、標準CMOSプロセスの活用による作成コストの低減が可能となっている。
また、チップ作成時のCMOSプロセスで発生する特性バラつきを最小限に抑える光導波路の形状とサイズで光回路設計を行うことで、光路切替素子の加熱条件の均一化や偏光無依存化を実現。開発した光スイッチは、光集積回路の基盤技術として、多数の光路切替素子の集積・接続を実現するもので、複雑な構成を追加することなく用途に応じた様々な仕様の光スイッチ開発に利用することが可能だという。
NECらは、同光スイッチの実現により、今後の広域光ネットワークやデータセンター内光ネットワークなどで求められる様々な仕様の光スイッチに向けて、複雑な構成を追加することなく光集積回路を実現できる基盤技術を確立したとしており、今後もシリコンフォトニクス技術の研究開発を進め、次世代光ネットワークやITシステムで必要となる様々な光通信装置の小型化・省電力化に向けて取り組んでいくとしている。