住友電気工業(住友電工)は、電解液に溶融塩のみを使用した2次電池(溶融塩電解液電池)を開発、同社大阪製作所で機内試験を開始したことを発表した。

溶融塩は、不揮発性や不燃性、高イオン濃度など、電池の電解液として優れた特徴があるが、塩を溶融状態に保つためには高温が必要であり、100℃未満に融点をもつ溶融塩(イオン液体)を電解液とした電池は実現されていなかった。

同社は、京都大学 エネルギー科学研究科 萩原研究室と共同で、融点57℃の溶融塩としてNaFSAとKFSAの混合物を開発。併せて、これまで培った電池技術をベースに充放電管理や電力系統への連系などの蓄電池システム化技術を確立するとともに、セルメットやタブリードなどの独自の部品材料を採用することで、高エネルギー密度かつ高出力の2次電池の開発に成功した。

今回開発した溶融塩電解液電池は、ナトリウム化合物からなる正極および負極、溶融したNaFSA・KFSA混合物の電解液で構成され、充電時にナトリウムイオンが正極から出て負極に入り、放電時にはナトリウムイオンが負極から出て正極に入るという構成を採用することで290Wh/lのエネルギー密度を実現した。

また、不燃性材料のみで構成されているため、地震や事故などの衝撃により外部から空気が混入しても発火することがないほか、過充電や電池温度の上昇による、いわゆる熱暴走現象も発生しないという特長がある。

溶融塩電解液電池は、稼働温度領域が57℃~190℃と他の電池と比べて広いほか、不燃性材料で構成されているため、排熱のためのスペースや防火・防爆装置が不要であり、電池を高密度に配置することが可能。同社の試算によると、同じ容量の組電池の場合、リチウムイオン電池の約1/2、ナトリウム硫黄電池の約1/4の体積となり、小型化が実現できるようになるという。

主な2次電池との比較

同2次電池は現在、同社大阪製作所において、一戸建て・4人家族1日分相当の9kWhの組電池4台分36kWhを所内電力系統に繋げ、構内試験を実施しているという。

溶融塩電解液電池の構成図

溶融塩電解液電池の外観

なお、コスト面では2万円/kWhが視野に入りつつあるが、今後は中規模電力網や家庭などでの電力貯蔵用途、トラックやバスなどの車載用途での実用化に向けて、電池の評価・改良を重ねるとともに、より低温で稼働可能な溶融塩の探索を進めていく予定としている。