NXP Semiconductorsの日本法人であるNXPセミコンダクターズジャパンは2月28日、同社本社において本社のSenior Vice President&CTOであるRene Penning de Vries氏が同社のスマートエネルギー分野に向けた取り組みの説明を行った。

NXP Semiconductors,Senior Vice President&CTOであるRene Penning de Vries氏

同社はエレクトロニクス分野を「エネルギーの効率化」「モバイル機器の接続性」「セキュリティ」「健康/医療」の4つの視点で見ており、このうちスマートグリッドやスマートホームに代表されるスマートエネルギー分野はエネルギーの効率化とセキュリティの2つが該当するという。

エネルギーの効率化としては、スマートメータや電力支払いのためのソリューションなどがあるが、「スマートメータは、1家に1台は少なくとも設置されるようになる。そのとき、機器側で何がつながっていて、何が外されたかを理解する知性が必要となる」と同氏は説明する。また、NAN(Neighbor-hood Area Network)やWAN(Wide Area Network)とのやりとりにはPLCもしくはワイヤレスが考えられるが、ワイヤレスとしてはZigBeeをメインに考えているとする。

スマートグリッドのイメージ。HANからNAN、NANからWAN、もしくはその逆にデータと電力がやりとりされる

スマートグリッド/ホームでつながる家庭内のイメージ

NXPの提供するZigBeeソリューション。トランシーバとレシーバ、コントローラの3つを用いて利用する

また、「メータメーカーは、すぐに使える通信ソリューションとして、RFの設計や認証が不要ながら堅牢かつ交換が簡単な扱いやすいシステムを求めている」とのことで、そうした要求に応えることを目的として開発が進められているのが、拡張メータリング・オープン・プラットフォーム(XMOP:eXtended Metering Open Platform)で、研究室レベルだが、NAN向けにGSM、HAN(Home Area Network)向けにZigBeeもしくはWireless M-bus、支払い機能としてのNFC、セキュリティ機能としてSmartMX/au10ticを1チップに集積したものを開発しており、こうしたデバイスを用いることで、さまざまな機能を容易に活用できるソリューションを構築することができるようになるという。

XMOPの概要(左)と実際のチップの画像

一方、家庭内の各種機器での消費電力を見てみると、「例えば冷蔵庫はどの家庭にもあるが、その多くはスマートなエネルギー消費をしているとはいえず、ワーストケースを想定した電力供給を行っており、無駄がある」と指摘する。こうした消費電力の無駄に対してはセンサの活用が有効であり、「各種のセンサがすでにあるが、それぞれを別々に用いたりするため、システムが複雑化したり、コストが余計にかかったりする。NXPではNFCをインフラとして活用する最適化センサの提供を模索していく」としており、スマートセンサのテストチップとしてCMOSプロセスを用いて、CMOSウェハの上層1~2層に各種センサを搭載する技術を開発。「湿度や衝撃、pH、照度、C2H4、O2の各センサはすでに提供もしくは試作できる状態で、CO2に関して現在開発を進めている段階」としており、将来的には、各種ICに利用条件に応じたセンサを搭載するといった形での提供を考えているとした。

家庭内システム向けスマートセンサチップのイメージ(左)と実際のチップ(右)。CMOSプロセスを用いたロジックの上に各種センサが搭載されているが、実際にどう埋め込んでいるのかは教えてくれなかった。また、日本法人のスタッフもこれを見たのが今回初めてとのことであった

加えて、これらの消費電力に応じた利用料金をいかに支払うか、徴収するかがビジネスという視点では重要となるが、そこにはやはり「セキュリティが重要。ワイヤレスももちろんだが、新興国を中心に多くの国でプリペイド型のシステムが用いられており、不正も起きやすい」とするほか「電気自動車(EV)が一般的になれば、電気スタンドでの支払いも当たり前になる。そうした意味ではNFCは直感的に利用でき、かつセキュリティの確保も可能なことから家庭内での利用にも応用可能だと考えている」という。また、NFCだけではなく、セキュア認証されたマイコンであるau10ticを用いることで、各機器のデータの安全性確保、プライバシー保護、第3者によるエネルギーの違法搾取やデバイス偽造の防止が可能となるほか、2011年1月末に発表したAtos Worldlineとの協業により、スマートメータからメータデータの管理プラットフォーム(MDM)にエンド・ツー・エンドでメッセージの暗号化ができるようになるほか、バックオフィス側でのデータ保存にも暗号化を行えるようになることから、HANからWANまで幅広い領域でセキュリティを保証できるようになるとする。

Atos Worldlineとの協業によりエンド・ツー・エンドのセキュリティを実現

なお、同社ではスマートホーム/グリッドに関しては「カスタマがクローズドプラットフォームでも良いのでスマートホームをやりたいと言った場合などにはNXPとしてトータルソリューションという形で提供する」としながらも、基本的にはオープンスタンダードの立場をとるとしており、ZigBeeなどの標準化動向を見つつ、柔軟な対応を図っていく方針とした。