ジュニパーネットワークスは2月25日、データセンター向けのファブリックアーキテクチャである「QFablic」、およびそれを実装した初のスイッチ製品である「QFX3500」を発表した。QFablicは同社が数年前から取り組んでいるデータセンター向けプロジェクト「Stratus Project」の成果のひとつ。ネットワークの仮想化を一気に進める技術として注目されており、同社代表取締役社長 細井洋一氏は「クラウドコンピューティングとモバイルという2つの大きなトレンドにより、データセンターにおいてはアプリケーションもサーバもストレージも仮想化が大きく進んできている。にもかかわらず、ネットワークの仮想化だけは遅れており、これがデータセンターの進化のボトルネックになっている」と指摘、「QFablicはこれまでのデータセンターで見られがちだったスイッチの多層化から脱却し、シンプルで高速、かつ安全な"ワンホップ(One Hop)"ネットワークを提供できるアーキテクチャ」と自信を見せる。
データセンターの仮想化が進む中、ネットワークだけは従来通りの階層構造を採っているところは多い。この階層構造による弊害について、ジュニパーネットワークスのエンタープライズソリューションマーケティング 小川直樹氏は「不要なレイヤや、多くのポートがスイッチの相互接続に使われているというムダにより、ネットワークの複雑化だけではなく、速度の遅延や多くのコストが生じている」としており、「たとえばあるサーバ上の仮想マシンが、別のサーバに移動した場合、それまでワンホップで快適に利用できていたユーザが、とたんにレイテンシに悩まされることなどがよくある」と説明する。
これを解消するのが1つのスイッチですべてのデバイスをワンホップにつなぐQFablicだ。シングルスイッチはシンプルで効率の良いファブリックネットワークを実現するものである反面、物理的な限界による拡張性の乏しさが課題となっていた。QFablicではこれを解決するため、「データプレーン」「コントロールプレーン」「マネジメントプレーン」の3つのコンポーネントに分けている。ネットワークの中央にはデータプレーンの「QF/Interconnect」があり、コントロールプレーンとなる「QF/Node」がエッジデバイスとしてこれに接続する。エッジ間でダイレクトに相互接続するのではなく、インターコネクトを介してワンホップで接続するため、より高速なスイッチ間接続が実現するだけでなく、拡張性も担保できる。そして全体を一元管理するマネジメントプレーンの「QF/Director」が管理ノードとしての役割を負う。
今回ジュニパーが発表した「QFX3500」は、上記のコントロールプレーンにあたるQF/Nodeを初めて製品化したファブリックエッジ。1ラックユニット(19インチ)の筐体に、48のSFP+/SFP対応10GbEポートと4つのQSFP+対応ポートを備えたL2/L3スイッチだ。QF/Interconnectと接続することで、最大128台の構成を取ることができる。受注開始は3月中を予定しており、参考価格は最小構成で482万8,000円からとなっている。なお、QFablicを構成するQF/InterconnectおよびQF/Directorは2011年第3四半期を予定している。
細井社長は「ネットワークにつながるすべてのコンピュータを最適化するというのがジュニパーのコンセプト。3年の期間と1億ドル以上の費用を投じて開発されたデータセンターのためのStratus Projectをはじめて具現化したがのQFablicであり、ジュニパーのめざす"Connect Everything, Empower Everyone"を進める重要なアーキテクチャ」と語り、高速性と拡張性を兼ね備えたシンプルなネットワーク実現のため、国内においてもQFablicの販売/サポート体制を強化していきたいとしている。