アドビ システムズは都内にて、デジタル一眼動画セミナー「CS5 DSLR MOVIE DAY」を開催した。セミナーには、米Adobe ダイナミックメディア部門 バイスプレジデント兼マネージャー ジム・ジェラルド氏が登場し、昨今の映像制作の動向、海外の映像クリエイターの最新事例などを紹介した。
ジェラルド氏はまず、「Premiere Pro CS5」や「After Effects CS5」、「Photoshop CS5」などの製品を紹介。64bitネイティブ対応や動画再生テクノロジー「Mercury プレイバックエンジン」の開発など、時代の変化に合わせてアップデートしてきたおかげで、放送局や映画産業などでもアドビ製品のユーザーが増えている現状を報告した。今後対応していかなければならない課題としては、「マルチスクリーン化」を挙げた。急速に普及率が上がってきているタブレット端末ユーザーを想定した動画配信技術なども、断続的に研究開発を行なっていくとのこと。
アドビ製品を駆使して活躍する映像クリエイターたち
セミナーでは、海外事例として4チームのクリエイターがスライドで紹介された。ジェラルド氏は彼らを「ビデオプロのニュータイプ」と呼んでいる。これは、新人作家という意味ではなく、新しいデジタルワークフローを意欲的に採用し、さまざまなコンテンツを制作しているクリエイターたちのことだ。彼らビデオプロのニュータイプの大きな流れとしてジェラルド氏は、「これまでスチルやビデオのカメラマンだった人たちが、最近では映像制作の現場にも足を踏み入れ、撮影から編集までを少人数で作り上げている」と業界の動向を語った。
最初に紹介されたのは、日本でも話題になっている映画『ソーシャル・ネットワーク』のデビッド・フィンチャー監督。この作品の映像制作ワークフォローには、「Premiere Pro CS5」、「CS5 Production Premium」が使われた。少人数で、なおかつ安価なデスクトップ環境で制作を進められたため、コストを抑えることに成功したという。
続いての事例は、長い間Avidユーザーだった映像制作ユニット NELSON MADISON FILMS。彼らはCS5からアドビ製品のユーザーとなった。その理由はただひとつ、REDで撮影された4Kの素材をそのまま加工できるから。ジェラルド氏は制作・編集を担当するマイケル・マディソン氏の「『Adobe Premiere Pro CS5』を使ったら、4K解像度のクオリティーと色情報をそのまま活用できた。2、3年前のテープレスワークフローでは実現不可能だった」というコメントを紹介した。
3人目の事例は、フォトグラファー兼映像作家のタイラー・スティブルフォード氏。彼はデジタル一眼レフカメラと「CS5 Production Premium」を使って映像を制作している。映像にも写真撮影のノウハウを応用しており、EOS 5D Mk2で撮影した短編ドキュメンタリー『The Fall Line』は「Banff Film Festival 2011」にて映画賞を受賞。タイラー氏は、「EOSで撮った映像素材を直接扱えるのが利点。変換を待たなくてよいので、すぐに作業に取りかかれる」とコメントしている。
最後に紹介されたのは、hurlbut visuals代表のシェーン・ハールバット氏。ハールバット氏は古くから映画業界に身を置く人物で、『ターミネーター4』や『イントゥ・ザ・ブルー』で撮影を担当してきた。そんな彼もまた、「Premiere Pro CS5」を使って映像制作を開始している。ハールバット氏によると、「他の編集ツールも使って比較したが、『CS5』がもっとも優れていた。暗部も明部も強いキヤノンのデジタル一眼レフカメラの撮影素材を直接編集できるのがよい」とのこと。