スペイン・バルセロナで2月14日 - 18日まで開催された「Mobile World Congress 2011」で17日、米Yahoo!のCEOであるCarol Bartz氏が基調講演を行い、デジタルパブリッシュプラットフォーム「Livestand」を披露し、モバイル時代のコンテンツ戦略について語った。

Carol Bartz氏

Bartz氏は冒頭、毎月6億3,000万人のユーザーがYahoo!サイトを訪問しており、多くがモバイル端末からアクセスしていると話す。「インターネットを前進させているのは技術だが、ユーザーが利用する目的はコンテンツがあるからだ」とBartz氏。今後、ユーザーが関連があるものを提供するパーソナライズが重要となり、さまざまなコンテンツをアグリゲート、キュレーションして提供する「コンテキスト(文脈)の中でのコンテンツ、これがわれわれのスイートスポットだ」とした。

それに向けた取り組みがLivestandとなる。Livestandはユーザーの好みに合わせてパーソナライズされたデジタルニューススタンドで、広告を含めさまざまなタイプのコンテンツを揃える。パーソナライズは最大の特徴となり、マシン学習技術により実現するという。パブリッシャー側からすると、コンテンツを作成すればYahoo!がシームレスにコンテンツを統合し、シームレスにさまざまな端末に配信してくれることになる。コンテキストに応じて広告も配信される。

基調講演中のデモではサーファー向けの雑誌「Surf Magazine」を中心にLivestandをプレビュー、特集記事などのコンテンツの閲覧はもちろん、サーフィンボードのオンラインショッピングなどの画面を開いて見せた。コンテンツを友人と共有し、FacebookやTwitterなどでコメントをやり取りすることもできるという。

広告のデモでは、記事の横に表示されたHewlett-Packardのプリンター広告をクリックすると、同社のiPad対応プリンターで印刷するというプロモーション広告やNikeの動画広告を見せた。「広告もコンテンツだ」とBartz氏は述べ、広告を積極的に取り込んでいく姿勢をうかがわせた。また、デスクトップが主流だった時代の広告から、動画やインタラクティブ性を盛り込んだ広告が増えてきていることも触れた。

初公開となるYahoo!のデジタルニューススタンド「Livestand」

カテゴリの画面。ニュース&特集、エンタメ、ビジネス&ファイナンス、ライフスタイル&トラベル、ヘルス&ファミリー、技術&サイエンスなどが並ぶ

マイライブラリのページ

位置情報に応じて、ローカルニュースやレストランガイド、天気情報も表示された

「パブリッシャーは読者にリーチしたいと思っている」とBartz氏、「1度パブリッシュすれば、それがさまざまなデバイスで動き、ユーザーにあわせてカスタマイズされる」とLivestandの狙いと魅力を語った。

LivestandのデモはiPadで行われたが、市場にはまずタブレット向けを提供するという。その後、スマートフォン、Web(PC)、TVなどでも利用できるようにしていく。Livestandそのものは各社のアプリストアで無料で提供されるようだが、コンテンツは有料のものも入るようだ。これらの明確なサービス概要やビジネスモデル、それにローンチに向けてのパブリッシャーとの提携などについては、基調講演中には語らなかった。

タブレット出版は米Apple、米Googleなどがサービスを確立しようとしており、Virgin Group「PROJECT」やNews Corpの「The Daily」などのタブレットオンリーのメディアが登場している。Yahoo!がデジタル出版でどのような戦略をとるのか、動きが注目される。