ルネサス エレクトロニクスとルネサス モバイルは2月16日に東京・大手町の貸会議室で報道機関向けの説明会を共同で開催し、組み込みカーナビゲーション(カーナビ)向けSoCプラットフォーム「R-Car」の最初の製品である、「R-Car M1」シリーズのサンプル出荷を2011年5月に始めると発表した。
ルネサス エレクトロニクスは2010年9月にモバイル分野と車載情報(カーナビ)分野、ホームマルチメディア分野のSoC開発ロードマップを統合し、各分野に最適なソリューションを提供していくとの方針を公表していた。モバイル向けには「R-Mobile」、車載情報向けには「R-Car」、ホームマルチメディア向けには「R-Home」と名付けたSoCプラットフォームを、各分野に適応したソリューションとして提供する。ハードウェアとミドルウェアの共通化によって開発コストの削減と開発期間の短縮を図る。
車載情報向けSoCプラットフォーム「R-Car」は、旧ルネサス テクノロジの車載情報向けSoC「SH-Navi」と旧NECエレクトロニクスの車載情報向けSoC「EMMA Car」を統合したもの。新たにハイエンド向けの「R-Car H」、ミッドレンジ向けの「R-Car M」、エントリ向けの「R-Car E」を開発していくと2010年9月に表明していた。
モバイルと車載情報、ホームマルチメディアのSoC開発ロードマップを統合し、各分野に最適なソリューションを提供していく(2010年9月にルネサス エレクトロニクスが公表した資料から引用) |
(モバイルと車載情報、ホームマルチメディアの各分野に適応した新SoCプラットフォーム。2010年9月にルネサス エレクトロニクスが公表した資料から引用) |
車載情報の新SoCプラットフォーム「R-Car」のロードマップ(2010年9月にルネサス エレクトロニクスが公表した資料から引用) |
「R-Car」シリーズのエントリ製品「R-Car E」ファミリとミッドレンジ製品「R-Car M」の概要(2010年9月にルネサス エレクトロニクスが公表した資料から引用) |
2月16日に発表された「R-Car M1」はミッドレンジ向けで、2010年9月当時に公表していた概要とほぼ同じ仕様のSoCチップとなっている。CPUコアとしてはARM Cortex-A9コア(動作周波数800MHz)とSH-4Aコア(動作周波数800MHz)を搭載し、3次元グラフィックス・アクセラレータ・コア(Imagination TechnologiesのPowerVR SGX540)とフルHD対応動画処理エンジン(独自開発のVPU)、音声処理エンジン(独自開発のSPU)などを内蔵する。
ルネサス エレクトロニクスのMCU事業本部で自動車システム統括部長を務める金子博昭氏 |
ルネサス エレクトロニクスのMCU事業本部で自動車システム統括部自動車情報システム技術部長を務める平尾眞也氏 |
「R-Car M1」には2品種があり、前述したARM Cortex-A9コア搭載品「R-Car M1A」のほか、ARMコアを搭載していない「R-Car M1S」がある。従来から車載情報向けSoC「SH-Navi」を利用してきた顧客のために、SH-4AコアだけをCPUとして内蔵する「R-Car M1S」を用意した。サンプル価格は「R-Car M1A」が6,000円、「R-Car M1S」が5,500円。量産は2012年6月に始める予定である。生産規模は3万個/月。本格的な量産時期は2014年で、生産規模は40万個/月とする計画になっている。
「R-Car M1」の発表で興味深いのは、専用の電源IC「R2A11301F」を用意したことだ。「R-Car M1」だけでなく、「R-Car」シリーズ全体に利用することを想定して開発した電源ICである。R-Car SoCのほか、外付けのDDR SDRAMに電源を供給する。
「R2A11301F」は最適な電圧を動的に調整して供給するAVS(Adaptive Voltage Scaling)機能を搭載しており、この機能によってSoCの消費電力を最大で20%削減できるという。また8チャンネルの12bit逐次比較型A/Dコンバータ回路を内蔵しており、自動車に搭載したセンサのアナログ出力をデジタル・データに変換するA/DコンバータICを省ける。
「R-Car」シリーズのSoCはCMOS回路であるため、微細な45nmプロセスを使って製造する。これに対して12bit逐次比較型A/Dコンバータ回路はアナログ回路なので、微細なプロセスを適用する効果があまりない。そこで緩やかなプロセスのアナログ回路である電源ICに、A/Dコンバータ回路を内蔵させたという。