日本アイ・ビー・エムは2月17日、記者説明会を開催し、主にハードウェア製品を扱うシステム製品事業の2011年の事業戦略とメインフレーム「IBM zEnterprise 196」向けアプライアンス「IBM WebSphere DataPower Integration Appliance XI50 for zEnterprise」(以下 DataPower XI50z)を発表した。
専務執行役員 システム製品事業担当 薮下真平氏は、2011年のシステム製品事業の戦略について、「昨年は革新的な製品をたくさん発表したが、今年はそれらを企業がグローバル競争力を強化するために活用してもらう年にしたい。これまではシステム基盤の提供を主として行ってきたが、今年はそこから踏み込んでソリューションとしてのインフラを提案することを目標とする」と語った。
こうした戦略を実現するため、今年1月1日より、ソリューションの開発・提案を行うチーム、マーケティング戦略の組織、パートナービジネスを行う組織を1チームとして連携を強化した組織をスタートさせた。加えて、プラットフォームを横断したソリューションが提案を行うため、クラウドとアナリティクス関連の人員が増員されたほか、技術やパートナービジネスについても横断的な組織が設立された。
先日、橋本社長が2001年の方針として、「メインフレームの売上はグローバルで好調、日本でもメインフレームを活用したインフラ統合の提案を強化していく」と説明していたが、それを実証すべく、zEnterprise 196向けの新製品が発表された格好だ。
藪下氏は、「日本におけるメインフレームであるSysytem zの売上はグローバルに比べると少ない。グローバルではSysytem zはハイエンドのサーバとして需要を伸ばしているのに対し、日本ではSysytem zはメインフレームとしてのイメージが強く、そのオープン性に対する認知度が低い。今後は、Sysytem zのオープン性を広めていきたい」と訴えた。
今年は、Sysytem z上でLinuxが稼働可能になって10年目となるが、藪下氏は「Linuxが動くということはオープンな証。プロセッサもPOWERと製造技術を共有しており、閉鎖的なものではない」と述べた。また、性能面でもこの十年で拡張されており、「動作周波数が5.2GHzのプロセッサを搭載しているzEntepriseは他社のハイエンドサーバを凌駕している」(同氏)という。
新製品であるDataPower XI50zの詳細は、技術理事の佐貫俊幸氏から説明がなされた。同氏は、多様化するアプリケーションに対応するため、同社では「汎用的な企業システム」と「特定用途のシステム」とに分けたハイブリッドなアーキテクチャを採用しているが、DataPower XI50zは後者向けの製品であると説明した。
DataPower XI50zは、同社のブレード・サーバーのテクノロジーを採用しており、SOAを実現するためのシステム連携基盤「ESB(Enterprise Service Bus)の機能」、「XMLベースのメッセージを異なるXML/データに高速変換する機能」、「高いセキュリティ機能」という3つの機能を実装している。販売はzEnterprise 196とセットで行われ、価格は1億5,000万円から。
佐貫氏は、DataPower XI50zの導入効果の例として、同社のアプリケーションサーバでセキュリティ機能を利用するとパフォーマンスが10分の1以下に下がるが、DataPower XI50zでセキュリティ機能を処理するようにすることで、10倍以上の効率が上がることを挙げた。「DataPower XI50zと同じ処理をサーバで実現しようとすると10台のサーバが必要となる。DataPower XI50zを導入することで、性能以外に、設置面積、エネルギー消費量、コストなどさまざまな面でメリットが得られる」と同氏。
さらに、同氏は「同等の機能をアプライアンスで利用する場合と比べて、zEnterprise 196で一元管理できることが長所」と述べた。zEnterprise 196の管理ソフト「zManager」から、DataPower XI50zも含めた稼働状況を監視できるほか、消費電力の管理や負荷分散などの制御も可能だ。
DataPower XI50zはzEnterprise 196のアクセラレーターとして2番目の製品になる。最初のアクセラレーターである「Smart Analytics Optimizer」は昨年発表され、同社のデータベースであるDB2の処理の高速化を実現する。これらアクセラレーターは顧客のニーズに合わせて開発が行われており、DataPower XI50zについては30の顧客からニーズがあったという。同社は今後も、ユーザーのニーズを踏まえ、アクセラレーターの開発を行っていく。