産業技術総合研究所(産総研)は、日本ゼオンの協力を得て、スーパーグロース法による高純度単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の大量生産設備の開発を進め、一日あたり600gの生産能力を実現したことを発表した。
産総研は、2004年にSWCNTの合成技術として「スーパーグロース法」を開発したが、同法で合成されるSWCNTは、触媒粒子を含まず炭素純度99.9%以上を実現しているほか、成長基板上の触媒パターンを制御することで、短時間で容易にマクロ構造体を作成できる上、合成後、容易に基板とSWCNTを分離することができるという特徴を有している。
今回開発されたスーパーグロース法による工業規模の大量生産装置では金属シート上に触媒層をコーティングしており、これをCVD炉に送り込むことで基板上にSWCNTを連続的に成長させることができ、各種の合成条件を最適化することで、幅50cmの金属シートの全面にSWCNTを均一かつ緻密に成長させることが可能。
成長したSWCNTは、剥離装置により自動で根元から切断され、基板から分離・回収される。同法で合成されるSWCNTは他の方法によるサンプルと比べても高純度であるため、特に精製することなく多くのアプリケーションに適用することが可能ながら、生産能力は従来の実験室レベルの合成装置はバッチ式で、一日あたり1g程度であったものが、600g以上に向上し、本格的な工業生産への対応が可能となったという。
一般にCVD法で作製される材料の形状は、製造装置の規模や形状に依存するため、小規模の実験用設備と大規模な生産用設備で製造した試料の特性が必ずしも一致しないが、今回の装置で製造されたSWCNTの形状は、これまで研究開発設備で製造した試料とほぼ同等であると産総研では説明している。
産総研では、同成果によりSWCNTの持つ優れた機能を最大限発揮した透明導電膜、太陽電池、薄膜トランジスタ、キャパシタなどへの応用に弾みがつくとするほか、今回の成果を活かし、つくばイノベーションアリーナ(TIA)のカーボンナノチューブ研究コアの活動の一環として単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)との協力の下、SWCNTの基盤研究を加速し、大量試料を必要とする用途研究開発を推進する計画であるとしている。