14日、環境省は優れた省エネ効果を達成しながらも魅力的な空間を創り出す「新たな省エネ照明空間デザイン」の普及を目的として「省エネ照明デザインアワード」を実施し、結果発表を行ったが、その会場では、アワードの審査員によるパネルディスカッションも開催された。
表彰式では、オフィスの電力使用量の2割を占めるといわれる照明で、50~80%の削減に成功した事例が紹介されたが、一般的な使い方では課題も多いようだ。
パネルディスカッションに参加したのは、審査委員長である元日本大学教授で工学博士の大谷義彦氏、審査副委員長で石井幹子デザイン事務所代表であり照明デザイナーの石井幹子氏、カワカミデザインルーム代表でデザイナーの川上元美氏、日本電球工業会専務理事で工学博士の武内徹二氏の4名。そして、モデレーターを月刊商店建築編集長の山倉礼士氏が務めた。
冒頭、山倉氏が「3年前はLEDを利用するだけで話題になったが、今は光の質を変化させた点が評価されている」と、LED照明の進化や普及の早さを指摘したが、審査委員からは利用法の課題に関する意見が多く寄せられた。
現在、メールが着信すると光るなど、照明をインフォメーションとして使用している例が多く見受けられるが、その点について石井氏は、「照明は明るさと温かみという原点にもどる必要にあるのでは」と意見を述べた。また、同氏は「昼間でも照明が使われているオフィスや店舗においては、照明をカットすることも重要」とし、単にLEDによる電力使用量削減だけでなく、照明そのものを削減する努力も必要だと訴えた。
同様に、制御によって光の量を減らすことが課題だとしたのは武内氏で、同氏は「日本の照明器具の効率はヨーロッパよりも2割高いが、使用量は4割多い」と、日本が照明を使い過ぎている点を指摘した。
そのほか、多くの審査員が指摘したのが、LED照明を使う際のデザインの重要性で、LEDは色温度の調整が比較的簡単なので、環境に合わせた照明を利用することが可能だが、利用する側がそのあたりを理解していないという。
大谷氏は、「LEDは半導体のため、これまで照明を作ったことがないメーカーも作るようになってきた。普及のためには、もう少し作る人、売る人、使う人が、照明を勉強する必要がある」と指摘した。
石井氏も、「人にとって適した照明とは何かをデザインに取り入れる必要がある。このあたりを建築家もデペロッパーもよくわかっていない面があり、何がいい照明なのかというコンセンサスができていない。もう少し、質のよい照明を目指す必要がある」と述べた。
さらに石井氏は、「LEDの色分布は自然光に比べ狭いので、色の微調整ができる。緑は植物の成長を抑制し、赤い光は植物の育成に適しているなど、対象によって、自然環境に合わせた利用ができる。そういう知識なくLEDを使っていくと、恐ろしいことになる」と、LED特性を理解しないまま使うことへの危険性を指摘した。
LEDの課題について武内氏は、「演色性と色の再現性を両立させて進化させていくことや、制御システムもより良いものを作っていく必要がある」としたほか、川上氏は、「光の種類を増やす必要がある。そうすれば、自動車などの製品にも波及していく」と述べた。
また大谷氏は、「LEDは、LED電球や蛍光灯型が多い。いつまでもそれに頼るわけにはいかない。LEDらしい使い方を見出す必要がある」と、新しい使い方ができるLED照明の登場に期待したほか、石井氏は経産省や環境省などの縦割りではなく、「省庁も横でまとまってやってもらえるとスピードがアップされる。面としてひろがっていくことが必要」と、LED普及に対する行政側の連携を訴えた。